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 「GoToトラベルが再開し、どんな仕様に変わってもすぐに対応できる準備は整えている」――。星野リゾートの藤井崇介情報システムグループエンジニアチームリーダーはこう力を込める。2021年5月、同社はGoToトラベルの再開を見据え、予約サイトを新たな仕様に対応させるための準備を進めている。「複数のパターンを想定して備えており、要件が確定し次第、エンジニア総出で一気に開発する」(藤井リーダー)。

星野リゾートが運営する「GoToトラベルキャンペーン」の予約サイト
星野リゾートが運営する「GoToトラベルキャンペーン」の予約サイト
(撮影:日経クロステック)
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 旅行需要の喚起を狙い、政府が2020年7月に立ち上げたGoToトラベルのキャンペーン。ただ、新型コロナウイルスの収息が見えず、いまだに再開の見通しは立っていない。再開後は同一県内や隣接地域の移動に限った旅行に限定する案が浮上するなど、国から具体的な方向性が示されておらず、リゾート業界にとっては不透明な状況が続く。事業者は確定したルールに基づき早急にシステムを改修する必要がある。

 星野リゾートが「すぐに対応できる」と自信を見せるのには訳がある。同社情報システムグループがここ3年で着々と培ってきたシステム開発の「内製力」があるためだ。GoToトラベルが始動した2020年7月には、わずか2週間で対応予約サイトを立ち上げた。

予約の約6割が自社サイト経由

 同社内製組織による開発劇の始まりは、政府からGoToトラベルの施策が発表された2020年4月に遡る。「当時、旅行会社だけでなく事業会社の自社サイトでの予約も補助の対象になることが噂されていた。予約の約6割が自社サイト経由の当社にとっては、何としてもシステムを対応させる必要があった」(藤井リーダー)。

星野リゾートでエンジニアチームリーダーを務める藤井崇介氏
星野リゾートでエンジニアチームリーダーを務める藤井崇介氏
2008年に京大大学院情報学研究科修了後、Javaでの開発に強みを持つアクロクエストテクノロジーに入社し約10年勤務。2018年に京都移住のタイミングで星野リゾート入社(出所:星野リゾート)
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 新型コロナによって星野リゾートが運営する施設の2020年4~5月の稼働率は前年同月の1~2割の水準まで落ち込んだ。システムの対応が遅れれば顧客がOTA(オンライン旅行会社)に流れ、施設の稼働率が上がっても旅行会社への手数料負担が増えて利益を圧迫する恐れがあった。星野佳路代表からも「GoToトラベルに自社の予約システムを間に合わせる」という強い方針が示された。