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 厨房のモニターに映し出されるコース料理の進行状況。調理や配膳のスタッフはモニターを見ながら、顧客が食べ終わった最適なタイミングでてきぱきと次の料理を提供していく――。

 京都・嵐山にある高級旅館「星のや京都」。同施設のきめ細かなレストランサービスを支える「料理進行管理システム」は、星野リゾート情報システムグループが独自開発したものだ。2021年度は新たに進行画面の並び替え機能やゲスト名の確認機能の追加を検討するなど、リリース後も使い勝手を高め続けている。

星野リゾートが独自開発した「料理進行管理システム」。料理の進行状況のほか、「サプライズケーキあり」「左利き」などの情報も一括管理する
星野リゾートが独自開発した「料理進行管理システム」。料理の進行状況のほか、「サプライズケーキあり」「左利き」などの情報も一括管理する
(出所:星野リゾート)
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「料理進行管理システム」の概要
「料理進行管理システム」の概要
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 同システムを導入したのは情報システムグループ運用チーム導入担当の新谷健介氏だ。もともと星のや京都で現場スタッフとして働いていた新谷氏は、自ら希望し2019年5月に情報システムグループに異動した。

 同システムを導入する以前の星のや京都は、ホワイトボードで料理の進行状況を管理するアナログな手法をとっていた。しかも同施設のレストランフロアは2フロアに分かれており、さらに管理を難しくしていた。スタッフ同士がインカムで連絡を取り合いなんとか運用していたが、料理の提供ミスやタイミングの遅れがたびたび発生していたという。「自分もキッチンで働いていた際に、料理の進行管理の課題を非常に感じていた」と新谷氏は語る。

 そこで新谷氏は温泉旅館「界」で利用していた料理進行管理システムを星のや京都にも導入することを提案。自らカスタマイズして星のや京都の仕様に仕立て上げ、導入にこぎ着けた。同システムはローコード開発が可能な「kintone」で開発しており、「社内のエンジニアリソースを使わず(システム開発の経験がない)私でも一定の改良ができる」と新谷氏は語る。

顧客向けはコーディング、社内向けはローコードの使い分け

 同社の情報システムグループは現場からの異動組と中途採用のエンジニアを半々の割合で共存させる体制をとる。「当社の施設はそれぞれ個性が異なり、オペレーションも違う。同じシステムをそのまま導入しても使うことができず、施設ごとにアジャスト(調整)する運用スキルが非常に重要だ。現場のリアルを知っているスタッフこそが活躍できる」(情報システムグループを統括する久本英司グループディレクター)。

 以前はITに詳しいエンジニアが現場へのシステム導入を手掛けていたが、現場の実態に即した業務運用に通じていないため、なかなかうまくいかなかったという。「システムはいかにスムーズに運用できるかが大事。現場経験のあるスタッフが入ってくれたのは大きい」(同)。kintoneなどのローコードツールがここ数年で充実したのも、同社の現在の体制を後押しした。

 同社の開発方針は明確だ。顧客向けの高いデザイン性と利便性が必要なシステムは情報システムグループのエンジニア部隊がコードを書いて実装し、社内のスタッフ向けシステムなどは可能な限りノーコード/ローコードツールで開発する方針をとる。「ローコードツールは業務を改善する熱意があれば実装できる。エンジニアにkintoneによるアプリ開発方法を指南するほど使いこなしている現場異動組のスタッフも多い」と久本グループディレクターは語る。