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 この記事は、リバネス代表取締役グループCEOの丸幸弘氏とフューチャリストの尾原和啓氏の著書を一部編集した日経ビジネスXのコラム「眠れる技術『ディープテック』を解き放て」にて2022年2月3日に掲載されたものを日経クロステックに転載しています。大学や研究機関で長期間かつ多額の費用をかけて研究開発された技術を基に、世の中の生活スタイルを大きく変えたり、社会の大きな課題を解決したりする技術「ディープテック(Deep Tech)」の潮流を解説します。

 これまで、社会課題とは非常に時間をかけ、お金をかけずに解決すべきものとされてきた。そのため、社会慈善活動家や、ボランティアなどの有志がその役目を担ってきた。これらがテクノロジーの力によって持続的なビジネスになったことで、有効な投資先として見込まれるようになった。ただし、ディープテックは事前の基礎研究や実験などに時間も資金も要するため、持続的なビジネスに成長するのには10年かかるといわれている。

 中長期的な投資を要するディープテックだが、ここでも投資の追い風が吹いている。1990年代から2000年代にかけて巨額の富を得たインターネット企業やソフトウエア企業の創始者らが、次世代への社会貢献として投資側に回っているためだ。

 ビル・ゲイツ氏らによる「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」は2000年に創始された。また2018年、マーク・ザッカーバーグ氏と妻のプリシラ・チャン氏は「チャン・ザッカーバーグ・イニシアチブ(Chan Zuckerberg Initiative)」を立ち上げている。こういった動きが、今世界中で盛んに起きているのだ。

 さらには、前回触れた通り、Yコンビネーターやセコイア・キャピタルなどの既存アクセラレーターも、従来のインターネット領域で投資先が減っていることを受け、ディープテックへの長期投資を始めている。ディープテックが最後のイノベーション領域たる現在の流れを、ここでは押さえておきたい。

 では、資金を集めるディープテックプロジェクトとは、具体的にどういうものか。たとえば地球上の二酸化炭素を減らすための試みとして、マメ科の根粒植物を活用した「オーダシャスプロジェクト」(The Audacious Project)がある。これはある64歳の研究者、Joanne Chory氏によって、世界的なカンファレンスである「TED」で発表されたプロジェクトだ。

 植物と光合成微生物は、炭素を根の中で二酸化炭素を糖にして蓄えることができる。それらの糖をスベリンに変化させることで、より多くの二酸化炭素を蓄えることが可能だと考えられる。彼女は、炭素をより多く蓄えられるマメ科の植物が荒野でも育つよう、さらに研究を進めると表明した。

 オーダシャスプロジェクトは様々なものがあり、これらのプロジェクトには多額の費用がかかる。そこで発表後に寄付を募ると、なんとたった1日で250億円もの寄付金が集まった。寄付したのは先述したビル・ゲイツ氏やマーク・ザッカーバーグ氏、セルゲイ・ブリン氏らを筆頭に、産業資本主義社会をけん引してきた、そうそうたるメンバーだ。

 ではなぜ彼らは持続的なプロジェクトへの寄付や投資を惜しまないのだろうか。