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 この記事は、リバネス代表取締役グループCEOの丸幸弘氏とフューチャリストの尾原和啓氏の著書を一部編集した日経ビジネスXのコラム「眠れる技術『ディープテック』を解き放て」にて2022年2月22日に掲載されたものを日経クロステックに転載しています。大学や研究機関で長期間かつ多額の費用をかけて研究開発された技術を基に、世の中の生活スタイルを大きく変えたり、社会の大きな課題を解決したりする技術「ディープテック(Deep Tech)」の潮流を解説します。

 前回に引き続き、東南アジアでローカルな課題解決に挑む企業を見ていこう。まずは、タイのRice Seed Sowing Droneだ。

 今、農業従事者の高齢化や減少は、グローバルでの課題となっている。おまけに人口増加中のアジア諸国では死活問題だ。そこで期待されるのが農業の自動化だろう。

 既に米国やオーストラリアでは大型の自動運転トラクターが開発されており、自動化によってより効率的な生産が可能になっているが、残念ながらこれらの技術をタイでは応用できない。

 なぜなら、タイの農地の多くは山間部にあり、土地の起伏が激しく不規則な地形に作られた棚田のため、平地用の大型トラクターを導入できないのだ。そこで、タイならではの立地条件にローカライズされた技術が注目されている。

ドローンから弾丸を発射して苗植え

 簡単に言えば、これはドローンによる苗植え機能だ。ドローンに取り付けたシューター技術を応用して、まるで田んぼに向かって銃で弾を打ちこむような要領で、肥料につつまれた苗の種入りカプセルを弾丸として均一に植えることができる。

 当然、苗床で丁寧に苗を育成し、耕運機や人の手で植えるのに比べ、ドローンでつくられた米の品質が問われそうなところだが、先述した通り、彼らの課題は大量生産だ。まず第一に、質より量を担保する必要がある。こういったローカルの特性に合わせた量を担保する「ローカルスケーラビリティー」もディープテックの成功の型のひとつなのだ。

 こうした技術が実用化されれば、マシンに細かな作業データを収集させ、自動学習させることによって技術を進化させることができる。まだ構想段階ではあるが、彼らは既ににシューティングによる肥料の追加や必要箇所のみの農薬散布などの機能についても研究を進めている。

 つまり、日本から見れば「ドローンでつくったお米なんて、美味しくなさそう」と言われそうな技術でも、5年もたてば、彼らは日本の高品質なお米と変わらないものをつくり出す可能性を存分に秘めているのだ。

 さらに大事なポイントは、こういった技術ができると、同じ条件で農業をする他国にも、技術を横展開できることだ。つまり、最初はローカルサステナビリティーとして回り始めたビジネスが、さらにローカルスケーラビリティーを起こすと、横展開されることによっていよいよ世界規模に市場規模を拡大させていくことが可能になっていくのだ。