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 この記事は、リバネス代表取締役グループCEOの丸幸弘氏とフューチャリストの尾原和啓氏の著書を一部編集した日経ビジネスXのコラム「眠れる技術『ディープテック』を解き放て」にて2022年3月8日に掲載されたものを日経クロステックに転載しています。大学や研究機関で長期間かつ多額の費用をかけて研究開発された技術を基に、世の中の生活スタイルを大きく変えたり、社会の大きな課題を解決したりする技術「ディープテック(Deep Tech)」の潮流を解説します。

 SDGs(持続可能な開発目標)の文脈の前にはCSRという考え方がある。CSRとは「Corporate Social Responsibility」の略で、企業の社会的責任という意味。社会課題に向き合うべき時代の流れの中で、どう対応すべきかの責任主体を明確にしていこうという考え方で、まず「持続可能性」という概念が1987年の国連『環境と開発に関する世界委員会(ブルントラント委員会)』が公表した報告書『我ら共有の未来(Our Common Future)』で提起された。同報告書では、「持続可能な開発」を「将来の世代の欲求を満たしつつ、現在の世代の欲求も満足させるような開発」と定義している。

 こうした定義に基づいてCSRの重要性が2000年に入って議論され、2010年には企業だけではなく組織がどう対応すべきかという形の国際規格として、ISO26000のガイダンスとして制定されている。

 ただ、本規格の国内審議をしていた財団法人日本規格協会内の資料を見ても、ISO26000を順守する直接的な経済メリットはうたわれていない。

 こういった流れを受けて提唱されたのがCSVとなる。ISO26000発効の1年後に、競争戦略の権威であるマイケル・ポーター氏らが提唱した。

 CSVは「Creating Shared Value」の略で、直訳すれば共有価値の創造、つまり社会価値と経済価値の双方を実現させるという考え方となる。CSRを本業の中に組み込むことで、社会的価値だけでなく経済的価値も獲得しようという流れが生まれた。

 CSR、CSVといった企業側の動きに対し、投資側の流れの中で生まれたのが「ESG投資」である。ESG投資は、2006年の国連責任投資原則(PRI)の提起がきっかけとなり、経済だけではない環境、社会への長期的貢献「トリプルボトムライン」を重視した世界共通の投資ガイドラインとして始まった。

 これまでの一般的な投資は短期的な収益とリスクで判断していたが、第3の投資判断軸として環境(Enviroment)と社会(Society)への長期貢献、そして経済も含めた持続的成長に統治するガバナンス(Governance)を加えることで、収益性に加えてESGを伴った企業・団体に投資が集まる流れを作った。

 世界最大の機関投資家である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2015年9月にPRIに署名。2018年には世界で約3400兆円(30兆6830億米ドル)、日本も約240兆円(2兆1800億米ドル)の投資規模となっている。