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政治家の中には特定の業界の主張を代弁する「族議員」がいて、党には「派閥」がある。いずれも票田や影響力を意識して形成されてきたものだ。デジタル領域の改革に注力することは政治家としてプラスに働くのか。

 デジタルは単独では決して存在し得ないものだ。何かをスケールさせ、そして円滑にするためのツールだ。そしてデジタルには2つの側面がある。そもそも、見えなくていい存在であるということと、一人ひとりに合ったサービスを届けられるという側面だ。

 デジタルは社会インフラに溶け込んで見えなくていい。そのインフラの上で個々人が円滑に生活できていることが重要だ。そして、個々人の課題に合った解決策を提示できる強みがある。

 IT企業はよく「ソリューション」という言葉を使う。まさに、デジタルが課題解決と相性が良いということを象徴している。インフラであるがゆえに万能でもあり、どの領域であろうとも課題解決につながるソリューションを提供できる。

 これは特定分野に縛られないということでもある。子育てや働き方といった個々人が抱えている課題に加え、企業の人手不足や生産性向上といった問題解決のツールとしてデジタルは存在できる。相手の課題に合わせて丁寧に話をすることでデジタルの重要性を多くの人に理解してもらえる。

有事における人事は「派閥の壁」を越える

 そもそもデジタルは私の思考と相性が良い存在でもある。フェアで多様な人が活躍できる社会をつくりたいと思っている。デジタルは従来のピラミッド型ではない、フェアで一緒に議論して情報を共有できる環境をつくりだす。

 政治の世界も企業と同様、平時と有事で動き方が大きく異なる。普段は年功序列型であっても、有事の際は派閥の壁を超えたプロジェクトベースでのアサインに変わる。そういった意味では派閥という枠組みに関係なく、いい先輩に恵まれた点は大きいように思う。

 当選直後から現デジタル改革大臣の平井卓也さん、規制改革のノウハウは河野太郎さん、デジタル庁創設の提言など行政改革は塩崎恭久さん、というように政策づくりの過程でOJTで学ばせてもらった。直近ではデジタル庁のカウンターパートとなるデジタル社会推進本部座長の甘利明さんに事務総長として、提言を取りまとめるという機会をいただいた。デジタルでこの国を良くしたいと旗を掲げ続けてよかったと思う。

8年前に国会で初めての質問に立ってから当時掲げた構想がようやく動き出す。記憶に残る苦労は。

 過去のことをすぐに忘れてしまう性格なので、あまり覚えていない。ただ、当選して間もない頃の反省点は記憶に残っている。会議であるべき論をどれだけ熱く語っても、物事がなかなか進まなかった。多様なステークホルダーに対して適切なタイミングで個別に説明ができていなかったからだ。

 それからは個別に会いに行って、「私が主張していることはあなたが抱えている政策課題の解決に役立ちますよ」と説明して回った。議員には災害対策を重視している人もいれば、医療の拡充を政策として掲げている人もいる。こうした人たちに丁寧に理念を伝えて回った。

 地道に続けていると、ある議員が会議で「標準化」という言葉を使い始めた。そうして、また一人「共通化が大事だ」と話す人が出てきた。自分が掲げた理念をほかの議員がまるで自分の言葉のように使い始めるようになった。

 「ほかの人に取られた」と思う人がいるかもしれないが、自分にとってはうれしい出来事だった。自分が参加していない会議でもコンセプトが広がっていき、浸透していった。そして、ようやく当時、自身で感じていた問題解決に向けて動き始めたのが今だ。そういう意味では一歩一歩積み重ねてきてよかったと思う。