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 この記事は、Relicホールディングス 代表取締役CEO/Founderの北嶋 貴朗を一部編集した日経ビジネスXのコラム「VUCA時代を生き抜くための新規事業開発マネジメント」にて2022年4月7日に掲載されたものを日経クロステックに転載しています。VUCA(Volatility=変動性・Uncertainty=不確実性・Complexity=複雑性・Ambiguity=曖昧性)時代と呼ばれる現在において、いかにして新たな産業や市場を創出するか。経営者だけでなく、ビジネスパーソン個人にも問われています。

 なぜ企業の新規事業開発は失敗するのか――。

 国内外を問わず、あらゆる企業が新しい事業を起こそうと模索しています。誕生したばかりのスタートアップから時価総額が世界有数の規模を誇る企業まで、あらゆる企業が「さらなる収益を生み出す新しいビジネス」を血眼になって模索しています。これは資本主義社会において、成長を続け、株主に還元することを前提とした株式会社という組織・事業体の宿命ともいえるでしょう。

 しかし、実際のところは、「新規事業開発がうまくいっている」と断言できる企業は極めて少数派です。大半の企業は苦戦し、試行錯誤しながら歩みを進めている途中です。特に企業内新規事業開発は、注目を集めて勢いに乗るスタートアップ・ベンチャー企業と比較してやゆされることも多く、またさまざまな制約や条件から、表に出ている成功例は非常にまれであると言わざるを得ません。

 今回は、多くの企業が壁にぶつかっている要因を考察し、企業内新規事業開発における本質的な課題をひもといていきます。企業内において大半の人が関わる既存事業の運営と新規事業開発は、そもそも前提が大きく異なります。事業の検討方法、検討した内容を実行する組織や体制など、あらゆる面で異なります。

 過去の経験や実績が豊富な既存事業とは異なり、新規事業開発においては、そもそも対象となる市場や顧客が不明確であるケースが大半です。それらについてのデータや情報が皆無に等しい状態で検討を進めなければならず、事業プランや計画の精度が低くなり、必然的に事業の不確実性が高くなります。この不確実性の高さゆえに新規事業開発の成功確率は非常に低く、取り組む領域や事業内容、成功の定義にもよりますが、センミツ(1000に3つ=0.3%)と表現されることすらあります。つまり、その大半は失敗に終わるのです。

 このような前提の中でゼロから事業を立ち上げ、進捗やKPI(重要業績評価指標)を観測しながら試行錯誤を繰り返さなければならず、新規事業が業績に貢献するまでには数多くの挑戦と長い時間を必要とします。もちろん、新規事業の当事者は、なるべく早く、そして確実に成功させるべく、一発必中の覚悟で取り組むことが重要です。

 しかし、企業や組織をマネジメントする側としては、短期の時間軸や単一の挑戦のみで成果や評価を見極めるのは現実的ではありません。中長期の目線で多くの事業を生み出し、結果としてわずかな成功が生き残る「多産多死」を前提に事業を捉える必要があります。そして、多くの挑戦と失敗を繰り返しながら成功確率を高めていくことが重要です。