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 この記事は、Relicホールディングス 代表取締役CEO/Founderの北嶋 貴朗を一部編集した日経ビジネスXのコラム「VUCA時代を生き抜くための新規事業開発マネジメント」にて2022年5月16日に掲載されたものを日経クロステックに転載しています。VUCA(Volatility=変動性・Uncertainty=不確実性・Complexity=複雑性・Ambiguity=曖昧性)時代と呼ばれる現在において、いかにして新たな産業や市場を創出するか。経営者だけでなく、ビジネスパーソン個人にも問われています。

 全社的なビジョンは、中長期の時間軸で企業として目指したい姿、ありたい姿を示すものです。この全社ビジョンの策定において大切なのは、従業員が「共感できるかどうか」。つまり合理性や客観的な妥当性よりも、経営トップの強い意志(Will)やリーダーシップ、哲学が“要”となるのです。

 不確実性が高く価値観の多様化が進む現代では、自社とそこで働く従業員にとっての幸せとは何か、自社の存在意義は何か、自社の事業を通して実現すべき社会や未来とはどのようなものか、そのために自社はどのような進化を遂げていくべきなのか、といった正解がない問いに自分たちなりの解を決める必要があるのです。

 これは従業員だけに向けたものではありません。経営トップは、株主や顧客、パートナー企業などありとあらゆるステークホルダー(利害関係者)に対してそれを示す必要があり、それは未来の従業員や新たなステークホルダーを育むためにも不可欠です。

 さまざまなテクノロジーの進歩や規制緩和により、あらゆる経営資源の流動性が高まりつつあるこれからの時代では、ヒト・モノ・カネ・情報などのリソースは共感できるビジョンを発信する企業にますます集中していきます。

 一方、それができない企業からはリソースがどんどん流出していくことになると筆者は確信しています。まさに企業の死活を左右する重要な問題だといえるでしょう。

 既に何らかのビジョンを定めている企業も多いと思いますが、これから先進的企業への変革を志すのであれば、改めて自社のビジョンを見直し、アップデートしていくことをお勧めすすめします。もしまだ明確に策定できていないのならば、新規事業に取り組む前にまずはビジョンの策定を行うべきだと考えます。今回は共感を得られ、従業員の奮闘を喚起するよいビジョンを策定する際の論点を挙げます。