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 この記事は、Relicホールディングス 代表取締役CEO/Founderの北嶋 貴朗を一部編集した日経ビジネスXのコラム「VUCA時代を生き抜くための新規事業開発マネジメント」にて2022年5月30日に掲載されたものを日経クロステックに転載しています。VUCA(Volatility=変動性・Uncertainty=不確実性・Complexity=複雑性・Ambiguity=曖昧性)時代と呼ばれる現在において、いかにして新たな産業や市場を創出するか。経営者だけでなく、ビジネスパーソン個人にも問われています。

 企業としての全社的なビジョンを策定したら、なぜ今このタイミングで新規事業に取り組まなければいけないのかについて、その意義を検討します。

 まずは第一歩として将来のビジョンと自社の現状を照らし合わせ、その差分(ギャップ)がどこにあるかを明確にします。

 ゴールである「ビジョンが達成されている状態における企業の事業内容や事業ポートフォリオ、それぞれの事業規模、対象としている市場や顧客と提供価値」などを想定した上で、現状の既存事業が持続的な改善や漸進的な成長を積み重ねたとしても「埋められないギャップ」があれば、それこそが新規事業に取り組む意義です。

 コロナショックが拍車をかけた今のVUCA時代には、既存事業の成長だけで企業が継続的に発展していくことはほぼ不可能であり、ビジョンの達成も極めて困難です。

 仮に、既存事業の成長だけで達成可能なビジョンを策定していたら、それはビジョンの目線が低すぎる可能性があり、むしろ即座に見直す必要があるかもしれません。魅力的なビジョンが策定されていれば、必ず新規事業に取り組まなければならないギャップが見つかり、意義を見いだすことができるはずです。

 同時に、「なぜ今、このタイミングで新規事業に取り組むべきか」も合わせて明示することが重要です。新規事業に取り組む際には、中長期で資金も含めた経営資源を継続的に投資していく必要があり、本来は既存事業が順調で企業に余裕がある時に着手することが望ましいからです。

 既存事業の収益基盤が揺らいで、企業全体として危機的な状態に陥っているタイミングでは、必要な規模の投資や事業開発を進めることは難しいため、もしその決断をする場合はなおのこと丁寧な説明が必要になります。

 イノベーション創出支援を専門とするコンサルティングファームである米イノサイト社のマネージング・パートナーであるスコット・D・アンソニー氏は、「必要に迫られる前に革新せよ、イノベーションの緊急性とイノベーション実施の能力は、逆相関の関係にある」と指摘しています。

 つまり、イノベーションの緊急性が高まれば高まるほど、イノベーションを実施するための能力は低下してしまうということです。