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フランスKnowMade*1は、特許と科学的情報の分析に特化した調査/コンサルティング会社である。各国の特許出願内容や取得特許から巨視的な特許傾向であるパテントランドスケープ(特許景観)を導き、競争環境と技術開発内容を理解することを得意とする。本コラムでは、同社が手掛ける調査の中から旬な技術の話題をお届けする。今回のテーマは、モーターなどを駆動するパワーモジュール分野での特許である。(日経クロステック)

*1 KnowMadeのWebサイト https://www.knowmade.com/ *2 本記事の原文: https://www.knowmade.com/press-release/news-power/patent-analysis-unveils-major-changes-in-the-power-module-industry-accelerated-by-the-ev-revolution/

 電気自動車(EV)/ハイブリッド車(HEV)で見られるような自動車の電動化の進展と、パワー・エレクトロニクス・アプリケーション用のワイドバンドギャップ(WBG)半導体技術、特にシリコンカーバイド(SiC)の広範な普及の結果、パワーモジュール業界はこれからの10年間で大きな成長機会を得る。一方で、次世代パワーモジュールの開発においては困難な時期を迎えることになる。まず、モジュールメーカーは、自動車サプライチェーン(ティア1やOEMなど)のプレーヤーとの新たな競争に直面する一方で、コストと性能の両面で自動車業界からの厳しい要求を満たさなければならない。さらに、既に定着したSi IGBTモジュールから新しいWBGモジュールへの移行には、高速スイッチング速度、高出力密度、高温度特性に加え、窒化ガリウム(GaN)とSiCが持つ技術的特性に対処するための高度な革新が必要となる。

 「特許の目的は重要な技術的問題を解決する独自のソリューションを保護することにあるため、次世代のパワーモジュールに関連する特許活動は10年前から大幅に加速し、そのランドスケープ(景観)で大きな変化が見られると予測した。具体的には、パワーモジュールのサプライチェーンにおいて上流・下流を問わず新規プレーヤーが参入してきたり、新規開発を加速するため、補完的なスキルを組み合わせたりすることが見られる可能性があるからだ。このために、ランドスケープとして知的財産(IP)の協働や買取りなどが見える可能性が高い」(KnowMade(ノーメイド)の化合物半導体及びエレクトロニクス分野を担当するテクノロジー&パテントアナリストのRémi Comyn(レミ・コミン)博士)。

日本企業が50%以上のシェアを持つ

 この10年間(2018年~20年)、三菱電機、富士電機、日立製作所、東芝といった日本の特許出願者が、パワーモジュール特許取得について、50%以上のシェアを占めてきた(図1)。日本のこれらのIPプレーヤーは、主にドイツInfineon Technologies(インフィニオン・テクノロジーズ)やドイツSemikron International(セミクロン・インターナショナル)などの欧州のIPプレーヤー、美的集団(ミディア)、Starpower Semiconductors(スターパワー)、中国中車(CRRC)などの中国のIPプレーヤーと競合している。米国はのIPプレーヤーの代表は、General Electric(ゼネラル・エレクトリック)、On Semiconductor(オン・セミコンダクター)、Ford Motor(フォード)であり、韓国はHyndai Motor Group/Kia Corporation(現代自動車グループ/起亜)、Samsung Electronics(サムスン電子)が主要な特許取得者となっている。このように、IGBTモジュール市場の多くのグローバル・リーダーが、そのままランキングの上位に定着しているが、トヨタ自動車やデンソーなどの自動車プレーヤーも含まれ、し烈な競争に直面していることがわかる。

図1 パワーモジュール特許景観における主な特許受託者
図1 パワーモジュール特許景観における主な特許受託者
(図:Knowmade)
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