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フランスKnowMade(ノーメイド)*1は、特許と科学的情報の分析に特化した調査/コンサルティング会社である。各国の特許出願内容や取得特許から巨視的な特許傾向であるパテントランドスケープ(特許景観)を導き、競争環境と技術開発内容を理解することを得意とする。本コラムでは、同社が手掛ける調査の中から旬な技術の話題をお届けする。今回のテーマは、SiCウエハーメーカーだったII-VI(ツーシックス)とGeneral Electric(GE)がタッグを組んだ意味を探る*2。(日経クロステック)

*1 KnowMadeのWebサイト https://www.knowmade.com/ *2 本記事の原文: https://www.knowmade.com/press-release/news-power/why-does-ii-vi-rely-on-general-electrics-ip-to-conquer-the-power-sic-markets/

 光学部品メーカー兼材料メーカーの米II-VI(ツーシックス)が米General Electric(GE)からシリコンカーバイド(SiC)技術の供与を受けている。2020年7月にII-VIが公表した。狙いは、EV/HEV用途で盛り上がるSiCパワーデバイスおよびモジュール分野への参入である。これまでSiCウエハー市場においてII-VIと米Cree(クリー)/Wolfspeed(ウルフスピード)やドイツSiCrystalを含むロームグループ企業が競合してきたが、SiCパワーデバイスおよびモジュールの分野でも競合することになる。

 「GEの(SiCに関する)特許活動は2000年代後半に始まりSiC MOSFETのプレナー型(平面)デバイスアーキテクチャーに焦点を当てている」と、KnowMade(ノーメイド)で化合物半導体およびエレクトロニクスを担当するテクノロジー兼パテントアナリストのレミ・コミン(博士)は指摘する。2020年時点で、GEの特許ポートフォリオにはSiC MOSFETに関連する30以上の特許ファミリー(複数の国で特許を有する単一の発明)が含まれており、30以上の特許権と40の出願中の特許申請があり、GEのグローバルIP戦略を反映して米国、中国、日本、ヨーロッパに広がっている。

 ノーメイドの特許調査分析によると、GEはプレナー型SiC MOSFET技術で最も活発なIP(知財)プレーヤーだったが、図1に示すように、Cree/Wolfspeedと三菱電機に対しては挑戦者だった。1990年代に特許活動を開始したCreeは、プレナー型SiC MOSFETのリーダーシップを発揮し、現在ではドメイン内の多数の主要特許を含む90以上の特許を世界中で取得している。一方でGEの特許ポートフォリオは18年時点で出願中の特許のみで構成されていた。しかし、ここ数年で、GEは将来性ある有望なIPを執行可能な特許として、強力な特許ポートフォリオに変換することができた。

図1 プレナー型SiC MOSFET特許ランドスケープにおけるGE のIPリーダーシップの進化
図1 プレナー型SiC MOSFET特許ランドスケープにおけるGE のIPリーダーシップの進化
(図:ノーメイド)
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 さらに、GEは特許を取得したSiC MOSFET技術に基づいたパワーコンバーターへとシフトしている。「GEは18年以降、SiC MOSFET特許ランドスケープにおいて、特許活動をスローダウンさせている。この分野での新規発明は数個だ。これはGEのSiC MOSFET技術が成熟した高いレベルに達したからだ」と、レミ・コミン氏は分析する。続けて「GEの特許活動は現在、主に世界での米国優先特許の拡張に関連している」とした。SiC MOSFETおよびSiCベースのコンバーターとは別に、GEは低インダクタンスSiCパワーモジュール、例えば特許US 10021802 (18年)や特許US 9893646 (17年)などに関連した幾つかの新規の発明を発表している。

 興味深いことに、GEが出願登録した多くの特許は、SiC MOSFETデバイスの閾(しきい)値電圧における負バイアス時の温度不安定性の緩和など、プレナー型SiC MOSFETのゲート構造に関連する問題に焦点を当てている。特許US 10367089では、GEの発明者は、1ボルト未満の閾値電圧の変動を制限するために、ゲート電極に配置された誘電体層と、誘電層の内部または下部に配置された救済(リメディアル)層を挿入している(図2)。

図2 1ボルト未満の閾値電圧の変動を制限する方法
図2 1ボルト未満の閾値電圧の変動を制限する方法
救済層123は誘電体層120の上に配置され、負のバイアス温度不安定性を緩和するように構成されている。(図:特許US 10367089)
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