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 SiC(シリコンカーバイド)パワーデバイス市場は、電気自動車(EV)での採用にけん引されて、急成長している。SiCパワーデバイス市場の売上高は2021年に10億米ドルを超え、その製造の主役は、日本、米国、欧州に拠点を置く企業である。フランスの市場調査会社Yole Développement(ヨールデベロップメント)の最新の予測によれば、今後数年間でSiCパワーデバイス市場は数十億米ドル規模となり、2027年には60億米ドルを超える。2021年から2027年の年平均成長率(CAGR)が34%になると推定されている。中国、韓国、台湾などの半導体業界の他の主要国は、日米欧の独占を打ち破るべく、自国でSiC産業を発展させる野望を持つ。しかしながら、SiCパワーデバイスに必要な全体的なサプライチェーンを短期または中期的に構築する能力に対しては疑問が残り、特にSiCウエハーの国内調達は困難である。SiCウエハー事業への参入障壁は驚くほど高く、現在、ごく限られた数の企業のみがパワーデバイスメーカー向けの大面積・高品質SiCウエハーを量産でき、EV業界から求められる厳しいデバイス要件に対応できると、考えられる。

 特許と科学的情報の分析に特化したフランスの調査/コンサルティング会社Knowmade*1はパワーSiC技術の特許ランドスケープ分析を実施し、2022年5月に「Silicon Carbide (SiC) Patent Landscape 2022」をまとめた。このリポートでは、SiC半導体業界の生態系(エコシステム)と新興のSiC半導体生態系に関する詳細な分析を提供している。今回はその中から、韓国政府や韓国企業の取り組みを紹介したい。2022年2月の日経クロステックの記事「SiCサプライチェーン制覇狙う中国 18年に特許出願で日本を超す」 記事へのリンク では、中国において政府の強力な支援の下、研究開発が行われていることを述べた。韓国でも同様に、既存の国内インフラの上にSiC産業を構築するために、政府から多くの資金が研究開発用に供給されている。最近の韓国の半導体業界は、M&A(合併・買収)やSiCに関する資産の買収、分社化など、将来の韓国国内SiCサプライチェーン構築に向けた重要な動きが活発化している。

*1 KnowmadeのWebサイト

 特許分析においては、韓国におけるSiC技術に関連した過去20年の特許活動を観察した。2000年代、韓国のパワーSiC特許ランドスケープを支配したのは、10年間で約20の新しい発明を発表した韓国Korea Electrotechnology Research Institute (KERI)と、2004年から2010年の間に昇華法によるバルクSiC結晶成長に関連する10以上の発明を発表した韓国Dong-EUI Universityである。

 2012年から韓国において特許活動が活性化し始めた。昇華法によるSiC結晶成長と化学蒸着によるSiCエピタキシーの開発に積極的に取り組んできた韓国LG Innotek(LGイノテック)と、SiC MOSFET技術に焦点を当てた韓国Hyundai Motor(現代自動車)にけん引され、2013年にピークを迎えている(図1)。全体として、韓国の特許活動はSiC基板開発で多くを占められ、380以上の発明(そのうちSiCエピタキシャルウエハーに関連する80以上の発明)がある。すなわち、SiC MOSFETに焦点を当てた210以上の発明(120以上の発明、そのうち70以上の発明がSiCトレンチMOSFETに関連する)を持つSiCパワーデバイスである。これまでのところ、韓国のIP(知財)プレーヤーはSiCモジュールとSiC回路の特許をほとんど出願しておらず(40未満の発明)、最初の特許出願人は2016年のHyundai Motor/韓国Kia(起亜自動車)である。

図1 パワーSiC 特許ランドスケープにおける韓国プレーヤー別公開特許の時系列推移
図1 パワーSiC 特許ランドスケープにおける韓国プレーヤー別公開特許の時系列推移
(出所:Knowmade)
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