半導体を巡る米中対立が深まるなか、次世代パワー半導体の筆頭であるSiC(炭化ケイ素、シリコンカーバイド)でも両国を中心に競争が激化している。中国は、技術のみならず知的財産(IP)でも日本や欧米を追い上げている。SiCのIPを取り巻く現状と今後について、フランスの調査・コンサルティング会社KnowMade(ノーメイド)が分析した。
KnowMadeは、SiCパワー半導体の今後10年におけるIPの重要な役割について分析した。半導体を巡る米国と中国の間の技術戦争が激化する中、米Wolfspeed(ウルフスピード)は中国のSiC産業の台頭を妨げる主要な米国プレーヤーとなる。
EV市場はSiCの出発点
2019年以降、スイスSTMicroelectronics(STマイクロエレクトロニクス)、ウルフスピード、ローム、米onsemi(オンセミ)、ドイツInfineon Technologies(インフィニオンテクノロジーズ)などSiCの先駆者は、電気自動車(EV)の時流に乗ろうと戦略を加速させている。その時流に乗るということは、自動車業界のプレーヤーに対してSiCを採用するよう説得し、その野望に合ったサプライチェーンの創出を支援することを意味する。
SiCパワー半導体メーカーが直面する課題の大きさは、半導体市場全体の1%以下のビジネスに対して各社が新施設や戦略的合併・買収(M&A)、調達契約などに2019年以降で数十億米ドルも投資したことから推察できる。
業界は、SiCの採用拡大に向けて製品開発とサプライチェーンの加速に努めているが、そこにはIPの問題が潜んでいる。SiCが半導体の覇権を巡る米中の競争において新たな戦場になるという懸念が高まってるのである。