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 「薬の要らない世界を目指す」――。アステラス製薬は2021年3月に開催したメディアセミナー「Astellas Rx+ Day」で、同社が開発中の「体内埋め込み型デバイス」の将来的な役割をこう位置づけた。

 体内埋め込み型デバイスとは、治療などのために体内に埋め込むデバイスで、エレクトロニクス技術を活用して生体情報を測定したり神経を刺激したりする機能を備える。世界で研究開発が活発になっており、薬を本業とするアステラス製薬も医療機器としての実用化を見据えて参入。2020年10月には、小型の体内埋め込み型デバイス技術をもつ米iota Biosciencesを買収した。小型のデバイスを活用して生体情報の取得と局所への電気刺激による治療を実施することで、まずは薬では解決するのが難しい疾患の治療法の開発を目指す。

機能複合型の体内埋め込み型デバイスの展望
機能複合型の体内埋め込み型デバイスの展望
(出所:日経クロステック)
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 エレクトロニクス技術を活用する体内埋め込み型デバイスには幾つか種類がある。(1)個人特定のために識別IDを内蔵したデバイス、(2)生体情報を計測するセンサーを内蔵したデバイス、(3)神経系に電気刺激を与えて筋肉や臓器の機能を制御するデバイスだ。

 現在は(1)、(2)、(3)が別々のデバイスとして実用化されているケースが多いが、今後体内埋め込み型デバイスの技術が発展すれば、例えば(2)様々な生体情報を計測した結果に応じて(3)神経に電気刺激を与えることで、臓器の活動や筋肉の動きなどを精密に制御することが期待される。(1)の機能を使い、得た情報を管理したり閲覧したりすることもできるだろう。機能を複合した体内埋め込み型デバイスは病状をコントロールすることや疾患の早期発見に加えて、精密な治療とリハビリにつながる可能性がある。

体内埋め込み型デバイスと手掛ける企業の例
体内埋め込み型デバイスと手掛ける企業の例
(出所:日経クロステック)
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