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 前回は、新規事業開発において特に強化すべき「技術」に注目しました。優れた技術を確立して良い商品を作る取り組みは重要ですが、売り上げに結び付けるにはそれに加えて、買ってくれる顧客を見つける努力が必要です。新規事業開発がうまくいっている企業は顧客ニーズをどのように捉えているのでしょうか。PwCコンサルティングと日経BPの協力により実施した新規事業についての実態調査の結果から、読み解いていきます。

 図1は、新規事業がうまくいっている企業(調査回答者全体の約25%)がうまくいった要因として挙げた20項目のうち、上位10項目です。マーケティングの3CでいうCustomer(市場・顧客)に関する項目が3つ入っています。

図1 うまくいった要因は何か
図1 うまくいった要因は何か
「あなたの勤務先企業・機関の新規事業開発に関して、どのように思いますか」の設問に対して「だいたいうまくいく」「うまくいくものが多い」「うまくいく場合が半分くらい」とした回答者(2016年はn=70、21年はn=101)について、回答数が多かったもの(21年調査の上位10位まで)を抜粋した。(出所:PwCコンサルティング)
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 A.顧客ニーズとの高い適合性は、2016年も21年も1位となっています。ただ、顧客ニーズの中身は年々複雑化しています。例えば食料品でいえば安くておいしいのは当たり前のニーズとなり、最近では「インスタ映えする」というニーズが出てくる、といった変化が起きています。

 B.市場の顕在化タイミングの見極めについては、16年に比べて21年は2倍以上(約16%から約36%)に増加しています。テクノロジーの進化によって事業スピードが加速している中で、新型コロナウイルス感染症によって外部環境がさらに大きく変化しており、その流れをキャッチした企業が新規事業を成功させている、という傾向を示しているようです。

 C.市場の規模の大きさや成長性の高さも、16年から不変の成功要因です。世の中が大きく変化する中で安泰な市場はなく、各社が市場規模の調査・予測に力を入れていると推測されます。

 この結果から見えてくるのは、うまくいっている企業は、「A.ニーズに適合した商品を、B.顕在化したタイミングで、C.大きな市場に提供している」という姿です。このうち、AとCに関しては、16年と21年で不変であり、手段としてマーケティングや市場予測などによる取り組みで成果を得られると予想できることから本稿では割愛し、Bの市場の顕在化タイミングの見極めに集中して見ていきます。

ニーズ顕在・潜在の視点と、取るべき行動

 ニーズが“顕在”している、すなわち既に気づいている状態か、あるいは気づいていない“潜在”状態かを見ていく際、注意しなければならないのが“気づいている・気づいていない”の主語として「自社」と「顧客」それぞれがあり得ることです。これらの状況を掛け合わせると図2のように4つの象限に分けて表現できます。例えば、左上の象限は、海外でヒットした商品やサービスを日本で展開する場合など、企業が顧客より先んじてニーズを認識している状態を指します。

 企業の新規事業の状況がどの領域に相当するかにより、それぞれ対応策が変わります。4つの象限のうち、左上と左下に対して考えられるアクションはほぼ同じなので、「自社が顧客ニーズに気づいている領域」としてまとめて捉えます。

図2 顕在・潜在ニーズを捉える視点
図2 顕在・潜在ニーズを捉える視点
3つの領域に分かれ、それぞれ対応策が異なる。(出所:PwCコンサルティング)
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