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 PwCコンサルティングと⽇経BPの協⼒により実施した新規事業についての実態調査の結果から、新規事業開発に成功する企業の共通点、これから取り組む企業が留意する点について読み解く本連載。これまで第2回から第4回にかけて3C(自社、顧客、競合)の観点で考察および提言を述べてきました。最終回となる第5回では3Cの観点に加えて、新規事業における「人」、特に経営者(トップ)の役割に焦点を当て、新規事業の成功要因について考察を加えます。そして最後に、新規事業に取り組む際に意識すべきことをお伝えします。

経営者の意識・意欲の高さが成功要因

 新規事業の実態調査の結果について、今回は経営者という観点で確認します。新規事業がうまくいっている企業の42.6%が「経営者の意識・意欲が高い」ことを新規事業の成功要因であると回答しました(図1)。一方、うまくいかなかった企業が失敗要因を「経営者の意識・意欲が低い」とした回答は22.4%となり、失敗要因とはそこまで大きくは認識されていない、という結果となりました(図2)。

 なぜ、うまくいっている企業だけが経営者の意識・意欲の重要性を認識しているのでしょうか。経営者の意識・意欲とは新規事業においてどのような働きがあるのか、改めて経営者の役割を正しく理解するところから始めたいと思います。

図1 うまくいった要因は何か
図1 うまくいった要因は何か
「あなたの勤務先企業・機関の新規事業開発に関して、どのように思いますか」という設問に対して「だいたいうまくいく」「うまくいくものが多い」「うまくいく場合が半分くらい」とした回答者(2016年はn=70、2021年はn=101)に、その要因を聞いた集計。回答数が多かったもの(20項目中の上位10項目)を抜粋した。(出所:PwCコンサルティング)
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図2 うまくいかなかった要因は何か
図2 うまくいかなかった要因は何か
「あなたの勤務先企業・機関の新規事業開発に関して、どのように思いますか」という設問に対して「うまくいくものは少ない」「うまくいくものはほとんどない」とした回答者(2016年はn=180、2021年はn=241)に、その要因を聞いた集計。回答数が多かったもの(21項目中の上位10項目)を抜粋した。(出所:PwCコンサルティング)
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経営者の役割と意識・意欲の有効性

 まず、経営者の役割について整理します。経営者とは一般的に“会社の意思決定における最高責任者“を意味します。意思決定が何を指すのかは会社によって様々ですが、会社が保有する経営資源の配分を指すことが多く、具体的には投資判断や人事判断(異動、評価)などが挙げられます。

 次に、これらの意思決定に意識・意欲がどう影響を及ぼすのかを見てみます。想像しやすくするため、逆に意識・意欲が低い場合の例を考えてみましょう。例えば、意識・意欲が低い上司に対して資料の確認や承認を依頼すると、いつまでたっても確認してもらえない、強くプッシュしないと承認してもらえない、飛ばし読みで理解が浅く拒否される、などの経験を持つ方は少なくないと思います。人が何かを検討・判断する場合、どうしても優先順位や時間の割き方を心の中で決めてしまいます。そして、その優先順位が本人の意識・意欲の高さに応じて変わってしまうのです。

 新規事業の担当として、プロジェクトを確実にスピーディーに前進させる上で、経営者の意識・意欲は低いよりも高いほうが、多少なりとも有利になるのが自然ではないでしょうか。

 そこで次なる疑問になるのが、意識・意欲を高めるためにはどうすればよいのか、もしくはなぜ意識・意欲が低くなるのか、といったところではないでしょうか。意識・意欲が低くなる要因を整理した上で、打ち手を考えていきます。