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 データセンターで使用する電力を、太陽光や風力といった再生可能エネルギー由来に転換する動きが日本で加速している。ヤフーは2021年5月、福島県白河市にある白河データセンターで利用する電力の一部を再生エネ由来に切り替えた。富士通は2022年度までにクラウドサービス「FJcloud」を100%再生エネで運用する計画だ。

再生エネ由来電力の利用を始めたヤフーの白河データセンター
再生エネ由来電力の利用を始めたヤフーの白河データセンター
撮影:日経クロステック
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 北海道石狩市では再生エネ100%で稼働するデータセンターの建設プロジェクトが進行する。京セラコミュニケーションシステムが北海道や石狩市と連携して2019年4月に始めた「ゼロエミッション・データセンター」のプロジェクトで、300ラックを収納可能で電力を2メガ(M)~3Mワット(W)消費するデータセンターに加えて、出力2MWの太陽光発電設備や同2MWの風力発電設備を建設する。

海外勢も積極的な動き

 日本でクラウドサービスを提供する海外勢も、日本国内のデータセンターが消費する電力の再生エネ転換を進める考えだ。米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス、AWS)の日本法人は、再生エネ調達担当者の採用を日本で始めた。親会社の米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)に関しては、日本で再生エネ発電所の建設を検討していると日本経済新聞が2021年5月に報じている。

 中国のネット大手の騰訊控股(テンセント)傘下のテンセントクラウドも2021年5月に東京都内に開設したデータセンターで使用する電力について、100%再生エネでまかなう計画であると日経新聞が報じた。テンセント広報は本誌に対し「回答は控える」とした。

日本の電力の4%を消費するデータセンター

 日本政府が2030年までに温暖化ガスを2013年度比で46%削減するとの国家目標を掲げた現在、データセンターにおける温暖化ガス排出削減、脱炭素化が急務となっている。資源エネルギー庁によると、国内のデータセンターやルーターなどネットワーク設備が消費する電力量は2017年時点で約340億kWh(キロワット時)で、日本全体の消費電力の約4%を占めるという。IT業界は温暖化ガス削減に大きな責任を負っている。

 日本経済新聞の調査によると、日経平均採用銘柄225社中、少なくとも4割の85社が温暖化ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンゼロ」の目標を掲げるという。企業のIT部門に対してデータセンターの温暖化ガス排出を削減せよとの業務命令がいつ下されてもおかしくない状況だ。またIT企業に対しては、取引先である事業会社やESG投資(環境・社会・企業統治に配慮しているかどうか)を重視する投資家などから温暖化ガス排出削減を求められるケースが増えそうだ。

 こうした状況の中、日本の大手IT企業や通信会社も温暖化ガス排出削減に関する目標を打ち出している。

主なIT企業や通信企業が掲げる脱炭素目標
企業名脱炭素に関する目標
NECNECグループにおける温暖化ガス排出削減について、2030年度までにSBT目標でScope1・2について2017年度比で33%削減。同社の事業活動に伴うCO2排出量(Scope1・2)を、2050年までに「実質ゼロ」へ
NTTコミュニケーションズ事業活動で使用する電力における再生エネ由来エネルギー比率を2021年度までに約20%、2030年度までに50%を目指す。2020年度時点で約4%が再生エネ由来。
NTTデータNTTデータグループにおける温暖化ガス排出削減について、SBT目標でScope1・2については2030年度までに2016年度比で温暖化ガス排出量を60%減を目指す。Scope3については2030年度までに2016年度比で同55%減を目標に掲げる
ソフトバンク2030年までに事業活動で使用する電力などによる温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル2030宣言」を2021年5月に発表
ヤフー2023年度までにデータセンターなど事業活動で利用する電力の100%再生可能エネルギー化を目指す「2023年度100%再エネチャレンジ」を2021年1月に宣言
日立製作所日立グループにおいて、バリューチェーン全体でのCO2排出量を2010年度比で2030年度までに50%、2050年度までに80%削減するという目標を策定。2030年までの計画を定めた「日立カーボンニュートラル2030」では、投資総額が840億円
富士通国内外のグループ拠点で使用する電力における再生可能エネルギーの利用を2030年までに40%以上を目指す。2022年度までに国内の同社データセンターから提供するクラウドサービス「FJcloud」を100%再生可能エネルギーで運用すると2021年2月に発表
*1:SBTはScience Based Targetsの略称。温暖化ガス削減目標の指標の一つ *2:Scope1は自社における燃料使用や工業プロセスによる直接排出。Scope2は自社が購入した電気や熱の使用に伴った間接排出を指す *3:Scope3は販売した製品の使用や廃棄なども含めた、Scope1・2以外の間接排出を指す

 ソフトバンクは2021年5月、2030年までに事業活動で使用する電力などによる温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル2030宣言」を発表した。ソフトバンクの宮川潤一社長執行役員兼CEO(最高経営責任者)は「しっかりやり遂げるという目線で2030年と宣言した。もちろん、できるならぜひ前倒ししたい」と話す。

ソフトバンクが2020年12月に開業した東京府中データセンター
ソフトバンクが2020年12月に開業した東京府中データセンター
出所:ソフトバンク
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 同社の年間消費電力15億kWhのうち、62%を携帯電話基地局が消費し、8%をデータセンターが使用する。現在は基地局の再エネ転換を中心に進めるが、データセンターに関しても2030年までに再生エネに転換する計画だ。