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 「将来的に、カーボンニュートラル(炭素中立)関連技術をしっかりとした事業にすることを視野に入れている」。こう話すのはデンソーが2021年1月に新設した環境ニュートラルシステム開発部長の石塚康治氏だ。

 カーボンニュートラル、つまり二酸化炭素(CO2)の排出と吸収で差し引きゼロにするための取り組みは広範囲に及び、その実現に必要となる技術も多種多様だ。CO2が大気中へと放出されるタイミングは製造業の直接的な事業活動ばかりではない(図1)。

図1 カーボンニュートラルにおけるCO<sub>2</sub>の循環
図1 カーボンニュートラルにおけるCO2の循環
カーボンニュートラルで目指すのは、大気中のCO2濃度が上昇するのを防ぐこと。そのためには、さまざまな活動で放出されるCO2を削減するだけでなく、化石燃料の使用を減らしてバイオマスや自然エネルギーを増やすというように、CO2の循環を考える必要がある。(出所:日経ものづくり)
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 加えて、大気中へのCO2放出を減らすだけが取り組みではない。化石燃料を極力消費しないCO2の循環の実現にこそ、カーボンニュートラルの本質がある。

 その成否の鍵を握るのは「技術」だ。製造業にとって、「クリーンな活動と便利な社会を両立させる技術や製品を開発し、事業として拡大させる」(デンソーの石塚氏)千載一遇のチャンスとも言える。

求められる「能動的カーボンニュートラル」

 カーボンニュートラルへの取り組みは、今に始まったわけではない。その動きは1990年代後半から徐々に活発化。海外に拠点を持つグローバル企業は、2000年ごろから欧州を中心とした大きなうねりを察知して動き始めていた。例えばソニーは10年、既に事業活動や物流における温暖化ガス排出量の削減目標を定める環境計画を策定していた。

 事業活動の大規模な変革と大きな投資を余儀なくされるこの動きを、「現実的ではない」「海の向こうの出来事」と傍観している企業も多かった。潮目が変わったのは20年10月。菅義偉首相が所信表明演説で「50年までに温暖化ガスの排出を全体としてゼロにする」と宣言した(図2)。21年4月には、それまで「13年度比で26%減」としていた30年時点の温暖化ガス削減目標を「46%減」と厳格化。2兆円の「グリーンイノベーション基金」など矢継ぎ早に打たれるカーボンニュートラル関連施策が示す国の本気度は、様子見だった企業の背中を押した。

図2 カーボンニュートラルをめぐる国の主な動き
図2 カーボンニュートラルをめぐる国の主な動き
(内閣府や経済産業省などの資料を基に日経ものづくりが作成)
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 ただし、国の取り組みや市場の要請といった外圧に動かされる受動的な発想だけでは、世界市場で勝ち残れない。カーボンニュートラルを新事業の創出につなげるといった能動的な発想で、ビジネスチャンスをつかんでいく必要がある。

 先述したデンソーは、豊田中央研究所(愛知県長久手市)と共同でCO2を回収してメタンガスを生成する技術の開発を進める。自社工場での利用にとどまらず製品とし外販する考えだ。保有する技術を生かしたカーボンニュートラル対策を自社内で活用した上で、その製品化やサービスの提供へ結びつける。この「変革転じて福となす」発想の転換が求められる。

 では、カーボンニュートラル時代に向けて自社の技術をどう生かしていくのか。冒頭で述べたように、カーボンニュートラル化の手段はさまざまだ(図3)。

図3 カーボンニュートラルの実現で考えるべき2つの軸
図3 カーボンニュートラルの実現で考えるべき2つの軸
CO2排出量の削減をどのタイミングで実現するか、が軸の1つ。材料やエネルギーが生み出される段階や、製品の使用時も考慮する。もう1つの軸が、CO2排出量を削減する方法。やむを得ず出てしまったCO2を回収する方法や、カーボンオフセットを活用する方法もある。(出所:日経ものづくり)
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