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LCA規制が強化へ

 欧州委員会で19年ごろから始まったとみられるLCA(Life Cycle Assessment)による規制化の議論の結果が、少しずつ表面化しつつある。例えばEVなどの電池に対して、24年からLCAによるCO2排出量の申告を義務付けることを決めた。

 電池以外の自動車素材に対する規制がどうなるかは、まだ見えないが、23年ごろに骨子が決まるとも言われる。ただLCAの観点でEVは、ガソリン車と比べて素材や車両の製造時のCO2排出量の比率が大きい(図3)。規制をかける動機は高まる。製造時CO2排出量が大きい部品や素材が、自動車に使えなくなる可能性は十分にある。

図3 ライフサイクルで見たCO<sub>2</sub>排出量の比較
図3 ライフサイクルで見たCO2排出量の比較
ガソリン車とHEV、EVを比較したもの。EVでは製造時CO2排出量の比率が高まる。(環境省の資料を基に日経クロステックが作成)
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 製造時のCO2排出量という点は、軽量化材料として利用が広がっている炭素繊維強化樹脂(CFRP)やアルミニウム(Al)合金には逆風となる。材料メーカーは製造過程における熱エネルギーの削減や再生可能エネルギーへの転換、リサイクル技術の導入を進めて対応する。

 リサイクルに関しては、ユーザー側である自動車メーカー各社も取り組みに協力する*5。例えば日産は21年1月、北米で販売を開始する新型「ローグ」で、同社として初めてAl合金製部品にクローズドループのリサイクルを採用したと発表した。車両組立工場で発生したAl合金の端材スクラップを分別し、UACJや米Arconic(アーコニック)などアルミメーカーの工場に送ってリサイクルする。

*5 Al合金のクローズドループリサイクルの海外事例としては、アルミ車体に熱心なドイツAudi(アウディ)は17年にドイツのネッカーズルム工場で導入した後、インゴルシュタット工場にも取り入れた。21年にはハンガリー工場に導入する計画である。

 LCA規制は将来、さらに強化される可能性がある。LCAに詳しい東京大学特任教授の星野岳穂氏は「LCAでは資源使用量の削減も重要な視点。CO2に対する規制が一段落すれば、欧州は次に資源使用量に焦点を当てるのではないか」と見通す。資源使用量を減らすには、資源の寿命や循環性などが大切になる。「ポスト脱炭素競争」まで見据えつつ、日本メーカーはCO2排出量の削減に取り組む必要がある。