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 ソニーは2021年4月、安定かつ低コストに再生可能エネルギーを利用できる「自己託送」の運用を開始した*1。自己託送とは、遠隔地で自家発電した電力を、電力会社の送配電網を使って自社のオフィスや工場へ送電して消費するもの。ソニーの自己託送が特徴的なのは、自社の所有地ではない場所で、自社所有ではない太陽光発電パネルを使って発電している点である。同社はこの取り組みによってCO2排出量を年間約192t削減できると試算している。

*1 ソニーは20年2月に静岡県内でも自己託送を実現している。このときは自社敷地内に設けた自社所有の太陽光発電パネルで発電した電力を、敷地外にある工場へ送電していた。具体的には、ソニー・ミュージックソリューションズJARED大井川センター(静岡県焼津市)の物流倉庫屋上に約1.7MWの太陽光発電パネルを設置。余剰電力を中部電力の送配電網を介して、同社の製造工場である静岡プロダクションセンター (静岡県吉田町)へ供給している。自己託送で賄っている電力は約900MWh。静岡プロダクションセンター全体で消費する電力の4%に当たる。

太陽光発電パネルの場所も所有も社外

 太陽光発電パネル(約400kW)の設置場所はソニーと無関係の愛知県東海市にある“牛舎"の屋根(図1)。太陽光発電パネルの所有者は、太陽光発電パネルの設計・施工や各種電気設備工事を手掛けるFD(愛知県刈谷市)で、電気を使用するのはソニーグローバルマニュファクチャリング&オペレーションズの幸田サイト(愛知県幸田町)だ。

図1 牛舎の屋根に設置した太陽光発電パネル
図1 牛舎の屋根に設置した太陽光発電パネル
愛知県東海市にある農家からFD(愛知県刈谷市)が牛舎の屋根を賃借し、FD所有の太陽光発電パネルを設置している。発電した電力はFDが管理し、ソニーの工場へ送電する。(出所:aはデジタルグリッド、bはFD)
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 発電した電力の送電はFDが管理する。ソニーとエネルギーサービス契約を締結し、牛舎の所有者から賃借した牛舎の屋根上に太陽光発電パネルを設置。中部電力の送配電網を介して、牛舎から約30km離れた幸田サイトへ送電している(図2)。

図2 自己託送のイメージ
図2 自己託送のイメージ
ソニーの敷地外にある牛舎から、中部電力の送配電網を介して、約30km離れたソニーグローバルマニュファクチャリング&オペレーションズの幸田サイト(愛知県幸田町)に送電している。(取材を基に日経ものづくりが作成)
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 まだ運用を開始したばかりだが、「電力料金は数%下げられた」(ソニー、数値は非開示)。自己託送では小売電気事業者を介さないので、電気料金に乗せられている「再生可能エネルギー発電促進賦課金」(現在は通常、3.36円/kWh)や、再エネ由来100%の電力を購入する際に上乗せされるプレミア料金は不要だ*2

*2 再エネ由来100%の電力を利用する際は通常、電力会社が準備したメニューを利用して購入する。ただし、こうしたプランで提供される電力は現在、企業間で奪い合いの状況に拍車がかかっている。安定して入手できる保証がない上、通常の電気料金より10〜30%程度高い。

 さらに今回の取り組みでは、太陽光発電パネルを設置する広大な敷地を自社で確保する必要がない。太陽光発電パネルを購入する必要もないので、導入時のイニシャルコストを下げられる。ソニーが採用した方式は、再エネ電力活用のハードルを下げ、その普及に拍車をかける可能性を秘める。