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 東レは、工場などから排出されるガスから二酸化炭素(CO2)を分離・回収できる炭素繊維製のろ過膜を開発した(図1)。同社の浄水器で利用する中空糸状のろ過膜に似た仕組みでCO2を分離する。「水処理膜の研究で培った多孔質体技術と、炭素繊維技術を生かした」(同社先端材料研究所主任研究員の三原崇晃氏)。既存のCO2分離膜(ゼオライト膜)と比べて細く柔軟性が高いことなどにより、体積当たりのCO2透過量や製造コストに優れる。

図1 東レが開発した中空糸状のCO<sub>2</sub>分離膜
図1 東レが開発した中空糸状のCO2分離膜
直径が300μmと細く、曲げ半径が約10mmの柔軟性も備える。(出所:東レ)
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細孔の寸法と膜厚を最適化

 中空糸状CO2分離膜はポリアクリロニトリル(PAN)を原料とした炭素繊維だけから成る。直径が約300μmの「支持体」表面を、数μm厚と薄い「分離機能層」で覆った構造だ(図2)。支持体の中央を貫通する空洞(中空部)の直径は約100μmである。分離膜の外側にある気体に圧力を加えると、CO2や水素(H2)だけが通過して中空部を流れていく。

図2 CO<sub>2</sub>分離膜の断面
図2 CO2分離膜の断面
分離機能層と支持体から成る。共に炭素の多孔質材料だが孔径は大きく異なる。CO2分離を実質的に果たすのは、孔径が1nm以下と非常に小さい外側の分離機能層。支持体は孔径が数百nmと気体分子には十分大きく、ガスの流路を確保する役割を果たす。(東レ提供の写真に日経ものづくりが加筆して作成)
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 分離機能層には、非常に微細な細孔が多数開いており、これが気体分子の“ふるい"になる。抽出したい分子であるCO2(分子径0.330nm)やH2(同0.289nm)は通すが、メタン(CH4、同0.380nm)や窒素(N2、同0.364nm)は通さない。こうした絶妙な細孔の寸法は、PANの焼き方の工夫によって制御できるという。

 分離機能層は薄い方がCO2の分離性能に優れるが、薄くなり過ぎると中空糸の形状を維持できなくなるなど耐久性が低下する。そこで内側に支持体を設けて分離機能層を支える。

 この支持体の特徴は、孔径数百nmの穴が連続して空いている点。この空隙構造がCO2の流路となる。炭素繊維が網の目のように連なっており、「外力が分散されるため耐圧性が高い」(東レの三原氏)。製造工程の詳細は明かさないが、「PANの加熱を含めた各工程で多くの工夫を重ねた」(同氏)。