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コロナ対策の中、先進企業はより一層のペーパーレス化へ突き進んでいる。テレワーク移行後も一部業務に残っていた紙を廃し、社員の出社を不要にした。従来のペーパーレス化とは違う、異次元の施策を講じた事例を紹介しよう。

 コロナ禍も2年目となる2021年、大手企業を中心に「異次元」と言えるペーパーレス化が進行中だ。ペーパーレス化と聞くと「オフィス内の書棚などに保管している紙文書の削減」といった施策が思い浮かぶ。だが先進企業は今、顧客向けサービスや契約手続き、稟議(りんぎ)と呼ばれる社内決裁などの「紙の牙城」だった領域で、ペーパーレス化に一段と踏み込んでいる。

企業におけるペーパーレス化の変遷とコロナ禍以降での新たな動き。コロナ禍で「ペーパーレス」の概念が変わった
企業におけるペーパーレス化の変遷とコロナ禍以降での新たな動き。コロナ禍で「ペーパーレス」の概念が変わった
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ペーパーレスは顧客のため

 顧客向けサービスのペーパーレス化を進める1社が三井住友銀行だ。2021年4月、普通預金口座を新規開設するなどの条件に該当する個人顧客が紙の通帳を使う場合、年間の利用料がかかるようにした。一方、メガバンクでは珍しい過去30年分の明細をペーパーレスで確認できる無料のWeb通帳サービスを充実させ、活用を促す。

 三井住友銀行はWeb通帳サービスの様々なメリットを顧客に訴求している。入出金明細をすぐ確認できるため「記帳のために店舗やATMに出向く必要がない」「過去の通帳を保管しなくてよい」といったものだ。同社はこの施策を、顧客の利便性や満足度を高めながらコスト構造を改革していく事務効率化、デジタル化の一環として進めている。

 契約手続きや社内決裁でペーパーレス化を断行する企業は2020年以降、増えている。住友商事やサントリーグループ、日立製作所、バンダイナムコグループで玩具・ゲーム卸最大手のハピネットなどだ。

 このうち、住友商事は2021年5月、海外企業との間で電子署名サービスを使った電子契約を始めた。2020年11月には既に国内企業との間で電子契約を始めているので、電子契約の範囲拡大を図った格好だ。

 同社はこの他、月に1万件ほどある社内決裁のペーパーレス化も進めている。営業部署から経理部署へ、取引先に向けた支払いを依頼する決裁手続きだ。2020年7月に国内の、同年12月には海外の取引先について、ワークフローシステムでの処理に切り替えるなどして、ペーパーレスで社内決裁が完結できるようにした。