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 ソフトウエアエンジニアの皆さんが「マネジメント」と聞くと、自分とは少し距離を感じる方もいると思いますが、「マネジメント」には色々な定義があります。この連載のキーワードでもある「経営」を英語に直訳すると「Management」という言葉が出てきますし、他にも「管理」という意味としても使われますが、個人的にマネジメントとは「束ねること」と「成果を出すこと」の2つの役割があると思います。

 例えば「なぜ我々はこの事業をやっているか?」というビジョンを考えたり「いつまでに何をどうやって成し遂げるか?」などのミッションや戦略を考えたりすることは、みんなを1つの方向や目標に向かわせるための「結束」のマネジメントです。

 束ねただけでは成果は出ません。事業成果の進捗を追ったりメンバー1人ひとりの進捗を見たりして行動の修正を促すための「成果」のマネジメントも必要です。

 前回、デジタル庁の組織図を起点に「個の強みを最大化し、最少チームで成果を出す」というテーマについて書きました。まさに「個の強みを最大化」させることは「パフォーマンスマネジメント」あるいは「ピープルマネジメント」といわれる領域の話で、組織の成果に極めて重要な役割を果たすものだと思っています。

 ソフトウエアエンジニアの世界も、いわゆる職人の「徒弟制度」に近いものがあると思っており、読者の皆さんの中には新卒メンバーのマネジメントを受け持ったり、若手新入社員のメンターになったりしている方もいて「いよいよマネジメントをしていかないと……」と不安に思う方もいると思います。今回は「個」の成果に向き合う「マネジメント」についての考え方について書いていこうと思います。

そもそも「マネジメント」って必要なの?

 いつのころからかシリコンバレーでは「1-on-1」という考えが当たり前になり「個」にフォーカスしたマネジメントスタイルが主流になりました。どういう背景があってこのようなやり方が確立されてきたのでしょうか。

 少し昔は業務の良しあしの判断基準が定量化でき、アウトプットが決まっている中では、機械的な測り方でも評価は成り立っていたのではないかと思います。時間通りに出社しているか、スケジュール通りに着工が進んでいるか、一定期間内に十分な生産ユニット数が出荷されているかなど、いわゆる工場的な考え、あるいは決まった作業をこなすオペレーション業務が主流だった時代に、「個」のパフォーマンスマネジメントはそれほど重視されてこなかったように思えます。

 もちろんその時代にもクリエーティブな職種や専門性の高い技術者など、時間をかけても必ずしも品質やアウトプットに影響がない仕事においては「個の能力開発」という側面に着目してきた企業もあったと思います(昔の米デュポンやスリーエムはかなりそれに近かったかもしれません)。それでも決して今ほどメジャーな考え方ではなかったのではないでしょうか。

 一方でソフトウエアが企業価値の源泉になっている今の時代は「エンジニア」や「プロダクトマネジャー」等の技術メンバーが大きな裁量を持つようになり、「個」のモチベーションやパフォーマンスが会社のビジネスに大きな影響を与えるようになります。こういった時代背景もあり、「個」のパフォーマンスに注目が集まっているのかもしれません。筆者はまさに「個」のパフォーマンスが「企業」のパフォーマンスを握っていると言っても過言ではないと考えています。