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 この連載はエンジニアの「エンパワー」を第一に考えて出発しました。その文脈で「経営」の考え方が普段のものづくりや意思決定にどう活用されるべきかを皆さんと一緒に考えてきました。

 しかし「エンパワー」とは非常に曖昧な言葉。「エンパワー」の言葉をそのまま解釈すれば「力をつけさせる」ことですが、具体的に何の力を付けるのか?

 仕事の幅を広げる(自分のできることを増やす)、生産性を高める(少ない時間で多くのことを達成する)、視野を広げる(意思決定のための材料を増やす)といったことはもちろん「エンパワー」の分解した定義として存在すると思いますが、より直接的なテーマとしては「稼ぐ力をつける」ことではないかと自分なりに捉えています。

 もちろん「経済的な豊かさ」が「人生の豊かさ」とイコールではないですし、マクロでみれば経済的成長を優先しすぎたあまり、様々なゆがみが生じており、環境問題含めサステナビリティーの課題に直面しているのも事実です。

 一方で、ミクロでみればやはりそれが自分の仕事の対価としてわかりやすく、その豊かさが我々の人間らしい生き方を支えてくれているのも事実なので完全に無視できるわけでもありませんし、ここは領域として一般的にタブーになりがちな領域なので、切り込むに値するポイントだと思います。

 今回の主題はズバリ「報酬」です。

 高い報酬をもらうためには「どういうスキルを伸ばせばよいか?」という問いもありますが、どちらかというとマクロ環境の設定やそれを決定する「どういう環境を選べばよいか?」という問いから始まると筆者は認識しています。

「報酬」はどうやって決まるのか?

 ソフトウエアエンジニアに限らずどの職種でも同じですが、一言で言ってしまえば「労働市場における需要と供給の均衡」で決まります。

 ものすごく需要が高く、供給(労働を提供する側)が少なければ、報酬は必然的に上がりますし、需要が少なく供給過多になれば報酬は下がります。ソフトウエアエンジニアとなればいまは完全売り手市場(つまり需要に対して供給が少ない状態)なので年々報酬水準は上がっています。

 理屈で考えるとそれだけの話ですが、一方で一口に「ソフトウエアエンジニア」と言っても報酬水準にはとんでもなく大きな差が存在するのも事実です。この差はどこから生まれるのでしょうか?

 仮に自分と同等のスキルを持った別の人物がいたとしても、どこに身を置くかで「差」が生じることも事実です。

「稼いでいるエンジニア」は一体どこで稼いでいるのか?

 知人が立ち上げたサービスで、ソフトウエアエンジニアの給与水準が企業ごと毎・職種ごとに見ることができる「PROJECT COMP」というサイトがあります(具体的な企業の数字を出すには会員登録をする必要があります)。

「PROJECT COMP」のWebサイト
「PROJECT COMP」のWebサイト
(出所:PROJECT COMP)
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 国外にも同様のサービスがあります。こちらでは「GAFAM」の水準が職位(グレード・レベル等)に応じて色分けして見ることができます。

「GAFA」社員の給与水準を閲覧できるサイト
「GAFA」社員の給与水準を閲覧できるサイト
(出所:levels.fyi)
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 これらを比較して気づくことが2点あります。

 まず給与水準が日本の企業と比べると、中央値に2~3倍くらいの開きがあります。トップになってくると7000万円や1億円近い報酬が支払われていることがわかります。「日本のエンジニア」でそんなに稼げる企業を自分は知りません。もちろんGAFAMはトップ・オブ・トップなので、そもそも比較対象にすべきなのかというと難しいですが、同じソフトウエアエンジニアでもここまで顕著に差が出るのはなぜなのか、改めてその金額の差に驚かされます。