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 「テレワーク導入により、紙でやり取りしていた決裁申請書の電子化が待ったなしになった」――。兼松の寺崎誠司IT企画部部長は2020年4月ごろをこう振り返る。

兼松は決裁申請書の電子化プロジェクトに挑んだ
兼松は決裁申請書の電子化プロジェクトに挑んだ
(撮影:日経クロステック)
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 新型コロナウイルス感染症の拡大とともに2020年4月ごろから兼松でもテレワークが浸透したが、紙ベースの決裁が多く残っていたため業務に支障が出始めた。課題解決に向け、寺崎部長らは決裁電子化プロジェクトを本格化させた。

急ごしらえのワークフローに課題

 電子化以前、兼松は投資案件や物品購入などに関する「決裁申請書」を原則紙の書類とし、年間で1万件ほどつくっていた。担当者がつくった決裁申請書を上司などの関係者が受け取り、意見を添えてハンコを押してまた次の関係者に回すという「スタンプラリー」が続いていた。複数人を経由するため、決裁までに時間がかかったり、場合によっては途中で行方不明になったりした。

紙の決裁申請書のサンプル。ハンコが何カ所にも押されている
紙の決裁申請書のサンプル。ハンコが何カ所にも押されている
(出所:兼松、以下同じ)
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 そんな日常のなかでコロナ禍となり、2020年4月の緊急事態宣言ごろから兼松社員の8割ほどがテレワークに移行した。ここで紙ベースで業務を回す難しさが露呈した。

 兼松は急きょ、それまで使っていたワークフローシステムと米Box(ボックス)のクラウドストレージサービス「Box」を組み合わせてテレワーク環境で使える決裁システムを開発した。だが、「紙を印刷してハンコを押し、スキャナーでPDFデータに変換して次の人にワークフローを回す仕組みだったため、手間がかかっていた」(寺崎部長)。

 「このままではいけない」。IT企画部は事態解消に乗り出した。

決裁電子化プロジェクトを前倒し

 幸いなことに、テレワークにおける紙問題を解決する手立ては見えていた。業務効率を高めること、さらには2022年に東京本社を移転する際に運ぶ書類の量を減らす目的もあり、IT企画部は決裁電子化プロジェクトを立ち上げるための仕様検討を2019年11月から始めていたからだ。

 開発のスコープは2つ。「電子化した決裁ワークフローシステムの構築」と「役員会議において最終審議する決裁申請書をタブレットで一覧できる電子会議システムの構築」である。各部署から上がってくる内容を審議するため、役員会議の資料は膨大で、「役員は抱えるぐらいの紙の束を持ち帰って週末に読み込み、週明けの役員会議に臨むケースが多かった」(寺崎部長)。

 スコープにのっとり、紙問題が勃発する前の2021年3月までに仕様と開発の協力企業を決めた。協力会社にはウルシステムズ(東京・中央)とDTSを選び、新システムのソフトにはNTTデータ・イントラマート(東京・港)の「intra-mart(イントラマート)」を採用することとした。

 2020年5月にプロジェクトをスタートし、稼働予定時期は約1年先の2021年4月と決めていた。ただテレワークに前述の支障が出ていたため、できる限り早期に稼働できないかとすぐにスケジュールの見直しに着手した。検討の結果、稼働時期を決裁ワークフローシステムのみ2020年11月に前倒して、電子会議システムは当初計画通りの2021年4月とした。