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 2022年9月の改正電波法で利用できるようになった新しい無線LAN規格。通信距離が半径約1kmと広いのが特徴。農園や工場など、IoT機器を使った広いエリアでの監視やデータの収集がしやすくなる。

 半径約1kmの長距離で通信できる無線LAN規格。2.4GHz帯および5GHz帯を利用する既存の無線LAN規格と異なり、920MHz帯の周波数帯を使用する。通信速度は最大で20Mbpsと、一般的な無線LANより遅いが、動画の送受信も可能だ。広範囲に設置したセンサーのデータや、監視カメラの映像を無線でやり取りする用途に適している。機器の設置や利用に免許は不要で、一般利用者でも手軽に導入できる。

 広い範囲で利用できる通信方式として、これまでも「LoRaWAN」や「Wi-SUN」などの通信規格が策定されている。いずれも主にセンサーが扱う少ないデータの送受信が主な用途だ。そのため最大通信速度は数10kbpsから1Mbps程度で、滑らかな映像を送信することは難しかった。

 IEEE802.11ahがこうした既存の規格に対して優れている点は、映像の送信が可能な程度の通信速度を確保していること。また、インターネットで使われる標準的なプロトコルを使用しており、市販のネット対応機器や通信ソフトなどを活用しやすい点もメリットだ。

 IEEE802.11ahは、次のような利用ケースが想定される。オフィスビル1棟全体のエネルギーマネージメント、工場向けの無線センサーネットワークのバックボーン、農業分野での作物監視や鳥獣害対策、災害時におけるドローンによる情報収集などだ。

 業務用途が中心とはいえ、免許不要で取り付け可能なことから、個人でも利用しやすい。例えば、親機1台で家中通信可能になるという特徴を生かし、監視カメラや屋外スピーカーなどを組み合わせたホームセキュリティへの活用も期待できるだろう。ほかにも、自宅駐車場に停車中の車との通信も可能なことから、自宅にいながらカーナビのルートを事前設定したり、車内視聴用に動画や音楽などのコンテンツを送信したりする用途への応用も考えられる。

フルノシステムズが開発したIEEE802.11ah対応アクセスポイント。2022年12月下旬の発売を予定する
フルノシステムズが開発したIEEE802.11ah対応アクセスポイント。2022年12月下旬の発売を予定する
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