全610文字
PR

 表面に微細な加工を施して波長をコントロールできる人工的な物質。光を含む電磁波や音波の反射方向を制御したり閉じ込めたりすることで、アンテナの感度や構造材の遮音性を高める。

 物質の表面に微細な加工を施すことで、光を含む電磁波や音波の反射方向を制御できることが分かってきた。こうした自然界では見られない特性を人工的に持たせた物質を「メタマテリアル」と呼ぶ。メタマテリアルによって負の屈折率を持つ液体が実現した場合、ストローを差し込むと、液体中にあるはずのストローの先が、外に飛び出したように見える不思議な現象が起こると考えられている。

 メタマテリアルは対象となる波の波長より微細な加工が必要だ。光は波長が短くナノメートルクラスの加工が必要なため、まだ研究途上にある。一方、波長がミリメートル以上の電波や音波については実用化が進んでいる。

 日産自動車は、騒音を効果的に遮るメタマテリアルを開発。ゴム製の板材と比べて約4分の1の重量で同等の遮音性を実現している。凸版印刷は、複数の電波を吸収できる軽量のメタマテリアルを開発。電波の干渉や漏洩を低減できる。

凸版印刷は特定の電波を吸収するメタマテリアルを開発。オフィスなどの壁に使用すれば、電波干渉や漏洩を低減できるという(出所:同社の報道資料)
凸版印刷は特定の電波を吸収するメタマテリアルを開発。オフィスなどの壁に使用すれば、電波干渉や漏洩を低減できるという(出所:同社の報道資料)
[画像のクリックで拡大表示]

 今後、光をコントロールできるメタマテリアルが実用化すれば、平らで薄型の高性能レンズ、光の回折限界を超えて微細構造を観察できる顕微鏡、背景の光を回折させて物体を視認できなくする光学迷彩、伝送ロスの少ない光ファイバー、高効率の太陽電池といった用途に応用できると期待されている。