高速通信と位置検出が可能な通信技術。半径10m程度の近距離で使用する。近くにあるデジタル端末同士のデータ通信や紛失防止タグ、スマートフォンを鍵として使えるデジタルキーなどの用途で利用が広がっている。
UWBは「Ultra Wide Band(超広帯域無線システム)」の略称。短く鋭い矩形波(パルス)の電波が持つ、中心周波数が高く、広い帯域に分散する信号を利用した無線技術だ。
通信範囲は半径約10m以内とごく近距離だが、省電力で高速に通信できる。さらに、対応する機器の方向や距離を誤差数cm程度の高精度で検出可能だ。この特徴を生かして、バッグや貴重品に取り付けて場所を特定する「紛失防止タグ」や、UWB対応スマートフォンを車やホテルの鍵代わりに使用する「スマートキー」の用途で利用が広がっている。
元は米国の軍事技術として開発されたもので、2002年に民生機器での利用が認められ注目を集めた。2000年代前半にはUSBを拡張して無線化する規格「Wireless USB」の基礎技術として使われたものの、同時期に導入が進んだ無線LANと用途が重なり、Wireless USBは普及しないまま役割を終えた。
しかし、その後、スマートフォンが爆発的に普及したことで、モバイル端末同士の高速通信技術として、現在、再び注目されている。米アップルが「iPhone 11」以降の製品にUWB対応チップを搭載し、一気に対応機器が増え、アップル製品同士の通信やスマートキー用途で使われている。同社の紛失防止タグ「AirTag」も、この技術を利用している。
Android端末では韓国サムスン電子や中国シャオミなどが対応機種を発売済みだ。さらにAndroid 12以降は、OSレベルでUWBをサポートしており、今後対応機種のさらなる増加が見込まれる。