米グーグルが同社のスマートフォン「Pixel 6」シリーズ向けに開発したSoC。AIや機械学習機能を向上させ、これまでサーバーを介して処理していた高度な音声認識や写真撮影時の補正などが端末上で可能になるという。
モバイル端末で、映像処理や音声認識といった用途でAI(人工知能)や機械学習が使われる場面が増えている。こうした処理では単純な計算を大量・高速に処理する必要があり、多目的に使えるCPUよりも特定の計算に特化したプロセッサーで処理した方が効率的だ。
もともと米グーグルでは、データセンター向けにAIや機械学習向けのプロセッサー「TPU」(Tensor Processing Unit)を自社開発していた。そのTPUをCPUやグラフィックスなどと一体化し、スマートフォン向けのSoC(System on a Chip)としたのが「Tensor」だ。同社が2021年秋に発売を予定するスマートフォン「Pixel 6」シリーズに搭載する。
これまでスマートフォンなどでAIや機械学習を使った処理をする場合、ネットワーク上のサーバーにデータを送信することも多かった。この方法では端末の処理能力によらず幅広い機種でAIや機械学習を適用したサービスを使えるメリットがある。一方で、ネットワークに接続できない状態では使えない、音声や画像など端末利用者のプライバシーに関連する情報をネットワーク上で頻繁に送受信するためセキュリティ面で不安が残るといった問題点があった。また、一度、サーバーに送信する必要があるため、即時性が求められる処理でタイムラグが生じてしまう。Tensorを搭載したPixel 6では、こうした点の改善が見込める。
Tensorに限らず、SoCとしてAIや機械学習向けの演算機能を、CPUなどと一体化することは、ICT業界のトレンドとなっている。米アップルや米クアルコム、韓国サムスンなどがそれぞれモバイル端末向けにこうしたSoCを開発済みだ。また米アップルはパソコン向けSoC「M1」でも同様の機能を搭載しており、この流れはパソコンでも広がりつつある。