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 2020年に引き続き、米Apple(アップル)は2021年のWWDC 2021(WWDC21)でも「Apple Pay」や「Wallet」まわりの機能拡充を進めている。筆者は肩書として“モバイル決済ジャーナリスト”を標榜しているが、最初の取材対象は2011年ごろに実用化が始まった「NFC(Near Field Communication)」だった。当時多くの業界関係者が集まって「NFCをどのように使っていくか」と世界中で議論を交わしていたものが、10年後の今ようやく実現しつつある。

 NFCは近距離でデータ転送を行う技術であり、その上で動作するアプリケーションは様々だ。携帯電話やスマートフォンなどモバイルデバイスを用いた「モバイルNFC」においても様々なアプリケーションが提案され、実際に製品化されてきたが、恐らく今最も利用されているのは「Apple Pay」に代表される「決済サービス」だろう。

 だが本来、モバイルNFCの目指していた世界は端末内部にID情報を保存して認証や身分証明に用いたり、ホテルや家の「鍵」として活用したりと、「ウォレット(Wallet)」と呼ばれるデジタル的な“財布”の中に様々な情報を保管しておき、必要に応じてNFCなどを経由して取り出すという使い方だ。日本では「おサイフケータイ」という仕組みがあるが、これも本来はモバイルNFCと同等の世界を夢見て誕生した技術だ。

 様々な事情でなかなか実装や利用の進まなかったモバイルNFCとウォレットだが、Appleの取り組みは今このコンセプトを実現する一歩手前の段階まできている。

10年前に業界が描いた世界がようやく現実のものに
10年前に業界が描いた世界がようやく現実のものに
(出所:アップル)
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拡充されるWallet

 Apple Payそのものも拡張が進んでおり、筆者の連載「キャッシュレス決済、世界探訪」でも触れたが、本稿執筆時点(2121年6月14日)で同サービスは世界63カ国(含む海外領などの地域)で利用可能になっている。対応国が北半球に偏っているなどの問題はあるが、先進国のほとんどの国では利用可能な状況になりつつあるといっていいだろう。

 またMastercardやVisaなどクレジットカードの国際ブランドが非接触決済で利用できる場所であれば、Apple Pay対応地域かどうかにかかわらずサービスは利用できる。そして決済面での拡充が一段落しつつある現状、アップルが次に強化しつつあるのが「Wallet」機能の拡充だ。

 WWDC 2021ではApple PayとWallet事業担当バイスプレジデントのジェニファー・ベイリー氏が登場し、最新のアップデートを紹介している。直近のトピックとしては、アップル本社もカバー範囲となる米カリフォルニア州サンフランシスコを中心としたベイエリアの交通系ICカード「Clipper」を2021年2月半ばにApple Payで利用可能になったこと、そして翌3月末には米Walt Disney World Resort(ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート)が「Disney MagicMobile」でのApple Pay(Wallet)対応を実現したことが挙げられる。