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 近年、世界の公共交通ではMastercardやVisaなど支払いに利用するクレジットカードやデビットカード(Payment Cardと呼ばれる)を駅や乗り物の入り口にある改札にかざして運賃を支払える「オープンループ」という仕組みの導入が進んでおり、Apple Payでの乗車も可能になっている。

 一方で、日本のSuicaのように専用の交通系ICカードを発行している都市も数多くあり、中国の各都市や米国の一部都市(ロサンゼルスやワシントンD.C.など)の交通系ICカードをWallet上に登録し、適時チャージを行える仕組みを実装している。Clipper対応もその一環だ。

 公共交通ではないが、Disney MagicMobileも「入場券」「乗車券」という意味では交通系ICのApple Pay対応に近いものがあるといえる。仕組みとしては日本のローソンの「Ponta」カードや、米Walgreen Company(ウォルグリーン・カンパニー)の「Balance Rewards」カードのNFCによるカード提示に近く、残高をカード上に保持(Stored Value)する仕組みとは異なる。恐らくは有効期限のみがカード上に記録されており、本人確認の照合が行われるとみられる。

 またWalt Disney World Resortでは「MagicBand」というNFCタグを搭載したリストバンドを提供しており、例えば同社が運営するテーマパークやホテルでの入退場や支払いに利用できる。前述の交通系ICカードも含め、Apple PayやWalletの仕組みの利点として、iPhoneだけでなく「Apple Watch」も利用できるため、同テーマパーク内ではほぼMagicBandと同じ感覚でApple Watchを利用可能だ。

米アップルでApple PayとWallet事業担当バイスプレジデントのジェニファー・ベイリー氏
米アップルでApple PayとWallet事業担当バイスプレジデントのジェニファー・ベイリー氏
(出所:アップル)
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Apple Card、Clipper、Disney MagicMobileの3種類のNFCカードがWalletアプリ上にそろい踏み
Apple Card、Clipper、Disney MagicMobileの3種類のNFCカードがWalletアプリ上にそろい踏み
(出所:アップル)
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2021年3月にApple Pay対応が始まった「Disney MagicMobile」
2021年3月にApple Pay対応が始まった「Disney MagicMobile」
(出所:Walt Disney World Resort)
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「Car Key」に続く「Home Key」の世界へ

 ベイリー氏はWalletのアップデートについて、「家の鍵として利用可能な仕組み」「オフィスの入退館や身分証の代わりとなる仕組み」「出張先のホテルでルームキーとして利用可能な仕組み」という3つを紹介している。2つめのオフィスの入退館に使える仕組みは、すでに「Student ID」などのApple Pay対応の中で発表しており、今回もその延長となる。こういったオフィスやキャンパスではHID Globalなど各種認証システムを開発するベンダーの製品が出回っているが、基本的には既存システムと連携する形でApple Pay(Wallet)は機能する。

オフィスの入退館カードもApple Pay(Wallet)上に
オフィスの入退館カードもApple Pay(Wallet)上に
(出所:アップル)
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 今回の新しいトピックとしては1つ目と3つ目の仕組みで、2020年の「Car Key」に続いての「物理キーの置き換え」を実現する仕組みとなりそうだ。クルマ向けのCar Keyには「ドアの開閉」「エンジンのスタート」という2つのギミックがあり、車種などにもよるが、これらを利用して既存の物理キーをデジタルキーとしてiPhoneで代替することになる。