全2985文字
PR

 2021年の米Apple(アップル)世界開発者会議「WWDC21」は、とてもよかった。「SharePlay」と空間オーディオが音楽の楽しみ方を何倍にも拡張してくれる予感にわくわくしたものだ。空間オーディオについては5月17日発表済みで、世界開発者会議のタイミングに合わせて公開されたことを付け加えておく。

FaceTimeの通話越しに音楽や動画を共有

 コロナ禍の影響で、人々の遠隔コミュニケーションの機会が増大しているからだろう。この秋公開予定のiOS 15やiPadOS 15では、コミュニケーション系の機能に力を入れてきた。特に気になったのがSharePlay。FaceTimeで通話中の相手と音楽、動画、スクリーンを共有する機能だ。

 例えば、FaceTime通話中にApple Musicの楽曲を共有できるので、「このギターソロのチョーキングがかっこいい」と思ったら、その部分で止めて、巻き戻して、また再生して、音量を調整──などということもできる。通話の相手も同様の操作ができるという。

FaceTime通話中にApple Musicの音楽を共有し、相手と同じ音楽を同期した状態で聴くことができる。通話相手の顔はピクチャー・イン・ピクチャーで小さく表示される。画像はWWDC基調講演の配信画面をキャプチャーしたもの
FaceTime通話中にApple Musicの音楽を共有し、相手と同じ音楽を同期した状態で聴くことができる。通話相手の顔はピクチャー・イン・ピクチャーで小さく表示される。画像はWWDC基調講演の配信画面をキャプチャーしたもの
[画像のクリックで拡大表示]

 しかも、コンテンツの再生は相手と完全に同期されているという。これから共有する楽曲のリストを、相手が編集することもできるそうだ。音楽系のサービスには以前から、SNSなどを使って「音楽を共有」する機能は存在したが、それは単にリンクを送信するだけの非同期共有だった。再生を同期したことにより、本当の意味での音楽共有が実現した格好である。なんと素晴らしい機能だ。

 また「Smart Volume」機能が実装されており、コンテンツの再生中であっても会話を始めると、音量のバランスを自動で調整してくれるという。

 自分の聴いている音楽を通話中の他の人に、ネット経由で聴かせると著作権侵害を行っているかのように思う向きもあるかもしれない。だが共有を行うには、相手もApple Musicを利用している必要がある。もし、利用者ではない場合、無料トライアルの案内が表示され契約加入に誘導される仕組みだ。

SharePlayの仕組み

 SharePlayの仕組みとしては、図のように、コンテンツを再生するアプリに実装された「Group Activities」と呼ばれるフレームワークがFaceTimeを通じて相互に通信を行う。当然ながら、通信の遅延などが発生するので、あらゆる操作が完璧に同期することは無理だろう。ただ開発担当者はアプリ開発者向けの解説ビデオの中で、素晴らしい同期能力を持っているという意味のコメントを述べて胸を張っている。

Group ActivitiesフレームワークがFaceTimeを通してデータをやりとりすることで共有を可能にする。画像はWWDCセッションの配信画面をキャプチャーしたもの
Group ActivitiesフレームワークがFaceTimeを通してデータをやりとりすることで共有を可能にする。画像はWWDCセッションの配信画面をキャプチャーしたもの
[画像のクリックで拡大表示]

 サードパーティーのアプリケーションプロバイダーが自社アプリにGroup Activitiesを実装すれば、SharePlay機能を実現できる。Group Activitiesは音楽だけでなく、動画、Web閲覧、ゲーム、写真、お絵かき、テキストなど、あらゆるメディア形式を共有できる。その際、通話相手がアプリを導入していなければ、App Storeに導いてダウンロードさせることができる。

 SharePlayは、iOS 15、iPadOS 15、macOS Monterey、tvOS 15で利用できる。各デベロッパーはこの秋に予定されている正式リリースの初日に間に合うように、今からせっせと実装に励むのであろう。SharePlayのような新機能の場合、それに対応したアプリを、いち早くApp Storeに出せるかどうかでダウンロード数が大きく違ってくるからだ。