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 経済産業省と東京証券取引所が2021年6月に発表した「デジタルトランスフォーメーション(DX)銘柄 2021」。「日本の先進DX」といえる選定企業の事例を厳選して取り上げ、DX推進の勘所を探る。旭化成は自社や競合の知的財産情報を分析して事業戦略に生かす「知財のDX」に力を注いでいる。

 「事業競争力を維持していくにはこれまで以上に知財戦略が重要になる。事業の優位性確保、新事業創出、事業判断など、知財を戦略的に活用して社会に新しい価値を提供していく」――。旭化成の小堀秀毅社長は2021年5月に開いた3カ年中期経営計画(2020年3月期~2022年3月期)の進捗説明会でこう力強く語った。

 同社は中計におけるDX戦略の柱の1つとして、知財情報を生かした「IP(知財)ランドスケープ」を掲げる。IPランドスケープとは自社や競合他社の特許や商標、意匠など知財に関する多様な情報を分析し、経営や事業の判断に活用する取り組みだ。自社の経営分析や新規事業の創出に活用できるほか、M&A(合併・買収)や提携先企業の候補の洗い出しなどに生かせる。

IPランドスケープのイメージ。画像は旭化成のコア特許技術をマップ化したもの
IPランドスケープのイメージ。画像は旭化成のコア特許技術をマップ化したもの
(出所:旭化成)
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 金融庁と東京証券取引所が2021年6月に改訂したコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)でも知財の活用を促す内容が加わるなど、企業経営における知財の扱いに注目が集まっている。旭化成は2015年から知財情報の活用を本格化しており、IPランドスケープに注力する国内の先進企業の1社として知られる。

 「特許は事業を強くし有利にするために出願するもの。そのため競合他社の特許を分析して俯瞰(ふかん)すれば、その会社の戦略が見えてくる」。旭化成の中村栄研究・開発本部理事知的財産部長シニアフェローはIPランドスケープの重要性についてこう語る。「大量の知財情報から競合他社の戦略を読み解くため、IPランドスケープは社内で『知財のDX』と呼んでいる」(中村氏)。

旭化成の中村栄研究・開発本部理事知的財産部長シニアフェロー
旭化成の中村栄研究・開発本部理事知的財産部長シニアフェロー
(撮影:日経クロステック)
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