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接種や予約確保が進む抽選制・割当制、「8割完了」の実績

 3方式は自治体の事情に合わせて選ぶべきだが、提言チームによれば、一般には「抽選制」か「年齢順制」がより優れている。ただし割当制も「日程変更の希望やキャンセルにうまく対応できれば問題ない」と、提言チームの1人で慶応大学経済研究所マーケットデザイン研究センター長を務める栗野盛光教授は指摘する。抽選制と年齢順制の違いは「順番をくじと年齢のどちらで決めるかで、公平性に対する議論を除けば本質的な違いはない」(栗野教授)という。

 一方で先着順は、国や大半の自治体が依然として採用するが、ワクチン接種の需要が供給を大きく上回っている限り、上述の3方式に劣ると提言チームは指摘する。「インセンティブ(予約の取りやすさ)」「効率性(自治体側と接種希望者の負担)」「公平性」という3つの指標の全てでだ。

 逆に供給が需要に並ぶほど増えてきたら、最も利便性が高いのは先着順となる。予約枠に空きが十分にあれば、希望者一人ひとりが複数の枠から都合のいい日時を選べるようになり、しかも抽選などを待つことなく即座に予約日時が確定するからだ。つまり「理想的には、供給が十分に増えるまでは先着順以外の方法を選び、途中で方式を先着順に切り替えるのが最も望ましい」(野田助教授)。

 需要が供給を上回る局面で、先着順をやめて3方式のいずれかを採用した自治体は成果を上げている。最初から割当制を採用した福島県相馬市は、現在の接種対象である65歳以上の実に80%以上が6月上旬までに1回以上の接種を終え、5月下旬から16~64歳への接種も始まった。

割当制を採用した相馬市が接種対象者に送った郵送物。希望をはがきで返信すると1回目と2回目の両方の接種予定日時が郵送で送られる
割当制を採用した相馬市が接種対象者に送った郵送物。希望をはがきで返信すると1回目と2回目の両方の接種予定日時が郵送で送られる
(資料出所:相馬市)
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 割当制で課題となる日程変更やキャンセルにもうまく対処できた。65歳以上における事前の日程変更の申込率は5%弱で負担にならず、当日に連絡なく来場しなかった当日キャンセル率も5%程度とワクチンを余らせない水準に収まっている。「64歳以下は日程変更や当日キャンセル率がより低くなっている」(保健福祉部)。特定の地区に割り当てを集中させて会場への送迎バスを用意するなど、接種しやすい環境づくりとかみ合った方式を採用したことが奏功した。

 兵庫県加古川市は先着順で混乱が起こった反省から、2021年5月下旬の接種分から抽選制に切り替えた。効果は大きく、5月18日に実施した初回の抽選では、5日の申込期間で対象者である80歳以上の5割にあたる1万2121人が応募した。接種済みを合わせて約7割の人が手続きを済ませたことになる。当選待ちの人が残っているが、抽選のたびに自動で繰り越しているので、対象者は当選の通知を待つだけでよい。

 提言チームは自治体から予約方法やシステムに関する相談を受け付けている。野田助教授の所属する東京大学マーケットデザインセンター(電子メール:market-design@e.u-tokyo.ac.jp)と、慶応大学のマーケットデザイン研究センター(電子メール:keio.market.design@gmail.com)の2つが窓口になっているが、自治体の認知はまだ低い。栗野教授は「もっと気軽に問い合わせてほしい」と呼びかける。