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接種券番号を集めた埼玉県、市町村が短期で協力

 埼玉県は6月1日にさいたま市で開設した大規模接種会場の運用を効率化するため、県内全63市町村と予約情報を連携させた。埼玉県が開設した予約サイトは接種券番号の誤入力を防ぐなど予約情報の確かさを確保できるうえに、二重予約の解消という形で成果を現している。

 大規模接種会場の6月1〜6日接種分について、無連絡キャンセルは25人。予約総数に対する比率はわずか0.6%に抑えられた。これは防衛省が東京・大阪で運営する大規模接種会場の無連絡キャンセル率4.7%(開設後8日間で4081人)を大幅に下回る。

 情報連携といっても埼玉県の取り組みは簡単なものだ。予約システムは相互接続せず、予約に関わる情報をCSVなどのファイルでやり取りするだけである。扱う情報は市町村が発行した接種券番号とその対象者の生年月日の組み合わせでほぼ完結する。

埼玉県が開設した大規模接種会場向けの予約システム。防衛省などとは異なり、市町村から集めた正しい接種券番号と本人の生年月日で認証する
埼玉県が開設した大規模接種会場向けの予約システム。防衛省などとは異なり、市町村から集めた正しい接種券番号と本人の生年月日で認証する
(出所:埼玉県)
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 具体的には、埼玉県は5月25日の予約サイト開設前に全63市町村から、各市町村で発行した接種券番号とその対象者の生年月日をまとめた全データの提供を受けた。予約システムはこの接種券番号と生年月日で認証できる県民のみを対象として、誤入力や架空番号の予約を防止した。

 一方、大規模接種会場で受け付けた予約済みの接種券番号は、市町村コードで振り分けて週次で各市町村に提供する。市町村は予約システムを参照して二重予約があるかを確認する。実運用は各市町村に委ねられているが、市町村の担当者は対象者本人に連絡を取って意向を確認し、二重予約を解消できる。

「情報連携は困難」の説明は本当か

 しかしこの簡潔な情報連携さえ、多くの行政機関は困難だと避けている。例えば防衛省が運営する国の大規模接種会場の予約システムは接種券番号などを集めず、架空の接種券番号などを防止できない割り切った仕様にした。

 岸信夫防衛相はその理由を「実施まで短期間等の観点から困難かつ、全国民の個人情報を防衛省が把握する事は適切でないと判断」(Twitterの投稿)したと説明する。都道府県からも「短期間に市区町村の協力を得て情報を集めることは難しいとみている」(東京都)といった声が多い。

 接種券番号と生年月日のデータセットは、取り扱いに注意が必要な個人情報に該当する可能性が高い。厳格に考えれば、市町村が県に提供する運用が適切かどうかは、市町村ごとに定める個人情報保護条例などに従って判断が必要とみられる。

 しかし、ワクチン接種という行政サービスの遂行目的を踏まえれば、新型コロナ関連で認められた疫学調査などのように「個人の生命、身体または財産の安全を守るため」や「緊急かつやむを得ない」場合に認められる目的外利用に該当すると考えられる。法令に抵触する可能性は低いだろう。

 埼玉県が市町村と情報連携で合意するまでにかかった期間は、わずか数日という。接種を円滑にするという目的を自治体間で共有できれば、情報連携はまだできる余地がある。