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 防衛省や各地の自治体に加え、職場でも新型コロナウイルスのワクチンの集団接種が始まり、対象も65歳以上の高齢者から16~64歳へと順次引き下げられている。今後ワクチンの供給量が増える見通しのなかで焦点となるのが、数千万人に上るとみられる接種希望者に対し、いかに効率良く、いかにスピーディーに接種を進められるかだ。

 そうしたなか、人海戦術に頼らない少数精鋭ながら、圧倒的なスピードで集団接種を進めている自治体がある。福岡県宇美町だ。1人の接種にかける所要時間は平均15秒。異例とも言えるハイペースで接種をこなせる背景には、考え抜かれたアルゴリズムとそれをさらに磨き上げるカイゼンの考え方がある。

60人待ちが15分で解消、「2時の予約なのに2時に帰れる」

 福岡空港から車で20分ほどのところにある宇美町の住民福祉センター。2021年6月のある週末、同センターに設けられた集団接種会場では、体育館に並べられた椅子に座った高齢者の間を、医師や看護師から成るチームが移動しながら新型コロナウイルスのワクチン接種を進めていた。医師で竹六総合医療コンサルタント代表の黒田亮太氏が考案した「高速大名行列」と呼ぶ方式だ。

福岡県宇美町の住民福祉センターに設けられた集団接種会場
福岡県宇美町の住民福祉センターに設けられた集団接種会場
(撮影:日経クロステック)
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 記者が訪問した日は、午後1時から72人の予約が入っていた。午後1時ちょうどから始まった接種は、接種担当者(打ち手)が1人しかいないにもかかわらず瞬く間に進み、午後1時15分には会場に来場済みの60人への接種が完了。早くも待ち時間はゼロになった。その後、三々五々来場する住民にも接種し、午後1時半前には72人全員への接種が完了した。

 午後1時半ごろになると、午後2時からの予約者がぼつぼつと会場に来始め、接種場所の椅子に座った。黒田医師は注射器へのワクチン充填の準備が済んでいることを確認のうえ、すかさず午後2時予約の住民へ向かった。「え?座ったと思ったらもう接種?」「そうですよ。2時の予約なのに2時には帰れますね」――。予約時間前にもかかわらず待ち時間ゼロで即接種となった女性は驚きを隠せずにいた。

 宇美町ではなぜこんなにも高速に集団接種を進められるのか。高速大名行列方式に施された6つのカイゼンをひもといていこう。