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 「あれ、どこかで見たような……」

 ドイツVolkswagen(フォルクスワーゲン、VW)の電気自動車(EV)「ID.3」の分解プロジェクトが、先進運転支援システム(ADAS)向けセンサーの調査に入った。ID.3は、前方監視用の単眼カメラとミリ波レーダー、後側方監視用の準ミリ波レーダー、周辺監視用の超音波センサーを搭載していることが分かっている(図1、2)。

図1 VWのEV「ID.3」のADASセンサー(前方)
図1 VWのEV「ID.3」のADASセンサー(前方)
単眼カメラをフロントウインドー上部の室内側、ミリ波レーダーをフロントグリル中央に装着する。超音波センサーは、前方に4個搭載する。(撮影:日経クロステック)
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図2 VWのEV「ID.3」のADASセンサー(後方)
図2 VWのEV「ID.3」のADASセンサー(後方)
リアバンパーの左右に準ミリ波レーダーを1個ずつ内蔵する。超音波センサーは、前方と同様に4個搭載する。(撮影:日経クロステック)
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 気になるのは、各種センサーを供給するサプライヤーだ。

 特に競争が激しいのが前方監視用のカメラである。例えばトヨタ自動車は、調達先をデンソー1社からドイツContinental(コンチネンタル)や同ZFなどに広げつつある。SUBARU(スバル)は長く日立Astemo(アステモ、旧・日立オートモティブシステムズ)製のステレオカメラを採用してきたが、2020年11月に発売した2代目「レヴォーグ」からスウェーデンVeoneer(ヴィオニア)製に切り替えた。

 VWはどうか。例えば、19年に最も売れたVW車であるSUV(多目的スポーツ車)「ティグアン」は、ドイツBosch(ボッシュ)製の単眼カメラを搭載する。これと組み合わせる前方監視用のミリ波レーダーはContinental製。順当にいけばID.3の単眼カメラもBosch製となるが、前例踏襲とはならないのが車載カメラ市場の厳しいところだ。

潮目の変化は19年後半

 ID.3の車体から取り外したカメラモジュールを観察したところで、冒頭のような既視感を覚えた(図3~5)。カメラの外装に貼られたラベルには、サプライヤー名の記載はない。だが、この形には見覚えがある。

図3 単眼カメラのカバーを外した様子
図3 単眼カメラのカバーを外した様子
取り付け位置がずれないように、アルミニウム(Al)合金製の台座に固定していた。(撮影:日経クロステック)
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図4 単眼カメラを取り外したところ
図4 単眼カメラを取り外したところ
カメラの撮影データをECU(電子制御ユニット)に伝送する配線にはEthernet(イーサネット)を使っていた。(撮影:日経クロステック)
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図5 ID.3のカメラモジュール
図5 ID.3のカメラモジュール
寸法は、幅96×奥行き84×高さ32mmほど。(撮影:日経クロステック)
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 ホンダの「フィット」と同じだーー。

 自信が確信に変わったのは、カメラモジュールを分解して内部の基板を確認したときだった。カメラの基板の中央に鎮座していたのは、イスラエルMobileye(モービルアイ)の画像処理チップ「EyeQ4」である(図6)。EyeQ4を採用する前方カメラを量産する大手サプライヤーはZFとフランスValeo(ヴァレオ)の2社。ZFのカメラモジュールには放熱用のフィンが配置されていることからも、消去法でID.3のカメラはValeo製と特定できる。

図6 カメラ内部の基板
図6 カメラ内部の基板
画像処理チップとして、Mobileyeの「EyeQ4」を搭載していた。(写真:フォーマルハウト・テクノ・ソリューションズ)
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 その後の取材で、VWが19年後半から主力車種の前方カメラでValeo製を採用していることが分かった。同年末に欧州などで発売した8代目「ゴルフ」を筆頭に、20年発売のID.3、そしてID.3とプラットフォームを共用するSUVタイプのEV「ID.4」などだ。