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 「土地や建物(Property)の活用に、ICT(情報通信技術)やAI(人工知能)などの技術(Technology)を導入し、利便性の高いサービスや製品を生み出したりする取り組みを意味する「プロップテック(PropTech)」。『100兆円の巨大市場、激変 プロップテックの衝撃』(日経BP)の著者が、フィンテック(Fintech)不動産版とも呼ばれる「最後の金脈」の可能性を解説する。(構成:小林由美=facet)

 前回は、プロップテックには「顧客起点」というフィンテックとの共通点があり、それ故にビジネスモデルとマーケットが既に確立された規制産業である不動産業界を大きく変えうる可能性がある、というお話をしました。ITを軸にした「顧客起点の課題解決」を持ち込んだスタートアップ企業らが、業界を“本来の起点”に立ち戻らせるようなサービスを生み出す思想が両者に共通すると私は感じています。

「プロップテック」と言い出したのは誰か?

 顧客起点の考え方を軸にした不動産関連のIT系サービスを「プロップテック」と呼ぶようになったのは2017~2018年ごろと比較的最近の話です。この言葉を一体、誰が最初に言い始めたのかについては、結局、業界にいる人たちも皆分からないのです。最近、海外を中心にしたSNS上でそういう話が盛り上がったくらいです。それはともかく、プロップテックという言葉が最初に出てきたコミュニティーにいた一人が、私の著書にも登場するジェームズ・ディアズリーさんです。ディアズリーさんはプロップテックのグローバルなマーケットプレイス事業を手掛けるスタートアップ英Unissu(ユニッス)の共同創業者です。

桜井 駿(さくらい・しゅん)
桜井 駿(さくらい・しゅん)
デジタルベースキャピタル 代表パートナー。みずほ証券、NTTデータ経営研究所を経て、2019 年にデジタルベースキャピタルを設立。規制産業領域であるPropTech、Fintechのスタートアップ投資・育成、大手企業向けのデジタル戦略、DXに関するコンサルティングを行う。不動産・建設領域のスタートアップコミュニティ「PropTech JAPAN」の設立や、一般社団法人Fintech協会事務局長、経済産業省新公共サービス検討会委員などを歴任。著書に、『決定版 FinTech』(東洋経済新報社、共著)、『知識ゼロからのフィンテック入門』(幻冬舎)、『超図解ブロックチェーン入門』(日本能率協会マネジメントセンター)などがある。(写真:栗原克己)
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 「プロップテック」という言葉の登場以前は、世界では「リアルエステートテック(Real Estate Tech)」、日本では「不動産テック」という言葉が使われていました。これらは主に不動産事業者向けの業務サポート製品やサービスでした。「不動産業界の非効率をよりよく改善しよう!」と皆、頑張ってやってきましたが、そのうち、「そもそも、不動産業界や業界従事者のためにやっているのか?」あるいは「不動産を利用する人たちのためにやっているのか?」と、世界の不動産テック関連の人たちの間で議論になりました。