オックスフォード大学の研究に端を発する 「AIが仕事を奪う」 というメッセージに世界は驚き、一時は「AI脅威論」が語られました。しかしそれは程なく「人とAIの共存の始まり 」と理解されるようになりました。
私たちの未来はAIと共にあります。それは、どんな世界、どんな働き方になるのでしょうか? 本書は、その問いに向き合った研究成果です。4人の研究者による足かけ5年に及ぶ活動の成果が本書にまとめられています。
本書で示すのは
- (1)AIと人が共存する仕事のイメージ
- (2)AI共存時代に求められる「人」の能力
- (3)AIと共存して成果を出す組織
- です。特徴的なのは、
- (4)現時点の組織・人を起点に複数の成功パターンを描いている
- ところです。
理想的な能力を持った人材で形成された理想的な組織を描き、これが「未来の仕事」と伝える方法もありました。ですが本書ではあえてそうせず、「非自律的な人材や学習意欲が高くない人材もいる」という現実から目をそらすことなく、読者一人ひとりが「AIと共存するあなたの未来」に向けた行動計画を立てられるようにするスタンスを貫いています。こうした「誰も取りこぼさない」という研究者たちの志が、この本の最も素晴らしいところです。
本書を読めばデジタル時代に身につけるべき能力が分かり、成功の具体的なイメージが描けるようになるでしょう。研究者の高い志のおかげで、読み終わって悲観的になることはありません。デジタル社会を生きるすべての人々に読んでもらいたい1冊です。
著者●上田恵陶奈、岸浩稔、光谷好貴、小野寺萌/定価●2750円(10%税込み)/発行●日経BP/判型●A5判232ページ/発行日●2021年9月13日/ISBN 978-4-296-10991-3