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 かつて経営危機に陥ったいすゞ自動車は、部品種類数を100万点から30万点に激減し再建を果たした。部品数を適正に管理すれば、ムダなコストを大幅に減らせ、開発期間の短縮や開発費の削減、生産性の向上、保守コストの削減、働き方改革の実現など、実に多くの果実が得られる。著者の豊富なVE(Value Engineering)の実体験に基づくノウハウをまとめた本書について、管理会計・原価計算の第一人者である大阪学院大学教授(大阪府立大学名誉教授)の山本浩二氏から書評をいただいた。(技術メディアユニットクロスメディア編集部)

 本書は、「ライバルに打ち勝つ究極の処方箋」というタイトルから分かるように、著者の佐藤嘉彦氏が経験した会社の経営危機を救った部品数マネジメントの重要性を伝えるものである。

 筆者は、佐藤氏が以前勤務していた自動車会社に、原価企画の研究として調査訪問した際に同氏と出会った。そこで、本の中でも紹介されているテアダウンルームを見学し、トースターのテアダウンの話もお聞きした。VE(Value Engineering)の専門家でもある同氏からは、当時の著書に「夢追い人」という自筆サインをいただいたことをよく覚えている。

 佐藤氏とは、それ以来のVEを通してのお付き合いであるが、このたび縁あって書評をお引き受けすることとなった。長年の実務に裏付けられた本書の内容について、管理会計・原価計算の研究者としての視点からコメントをしてみたい。まずは、本書の構成とその内容を要約して紹介する。

部品数が多いと何が問題か

 第1章では、部品数が多いと何が問題なのか、実務においてなぜ部品の種類が増えるのかを論じている。

 部品数が多いことに起因する問題は、そこに企業の多くの資源リソースが費やされることである。部品の直接材料費などの製造直接費となる資源だけではなく、製造間接費となる金型コストをはじめ、設計や倉庫保管などに関わる人的資源、開発期間(時間)、製造や保管の空間スペースなどが費やされ、それに伴って固定費というコストが発生する。VEを駆使して新規に開発設計した部品において直接費が従来部品より低減したとしても、その他の資源が多く費やされていたら、「価値を提供し利益を生んだ」とはいえない。

 しかし実務では、補修用部品も含めて部品の数が増えてしまう。それは、部品数を抑制する仕組みがないからであり、機能的競争力向上、コスト競争力向上、新たなレイアウト変更、新製品やモデルチェンジ、企業のインフラや文化、お客さまは神様という考え方が部品数を増やす。そして、設計者がお客さまのためによかれと思って設計しても、それが採算上思わしくない結果をもたらせば、「誤った最適設計」になると主張する。

部品数マネジメントに有効なモジュラーデザインを実例解説

 第2章では、部品数マネジメントは経営課題として、部品数増加が防止できない原因や部品数マネジメントのポイントを論じている。