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 デジタル化に合わせてビジネスをどう変革すべきか。UX(ユーザーエクスペリエンス)を軸としたDX(デジタルトランスフォーメーション)コンサルティングを手掛けるビービットが2021年9月に発売し、ベストセラーになっている書籍『UXグロースモデル アフターデジタルを生き抜く実践方法論』の一部を抜粋し、デジタルビジネスの極意を紹介する。(技術メディアユニットクロスメディア編集部)

 アフターデジタル時代では、バリュージャーニー型に転換した企業は、転換しなかった企業よりも高い競争力を持ちます。その理由は2つあります。

 1つ目の理由はシンプルで、個々の行動ステップにおける小さな成功を支援する企業よりも、顧客が大きな成功に至るまでの行動フロー全体を支援する企業(バリュージャーニー提供企業)のほうが、顧客の成功を強力に支援できるからです。「走りやすい運動シューズ」のみを提供している企業よりも、「コンディションの維持・健全化」という成功を成し遂げるために必要な一連のエクスペリエンスを提供している企業のほうが、顧客にとって魅力的な存在となるのは自然なことです。

 2つ目の理由は、バリュージャーニーの提供企業は複数の顧客接点における行動データを連携させることによって、ジャーニー全体での体験品質を高めることができるからです。例えば、専任のパーソナルトレーナーが付くプライベートジムを展開している企業が「食生活によるダイエットを管理するアプリ」や「自宅でできるトレーニング習慣の形成アプリ」を提供し、複数の顧客接点で行動データを連携させたとします。

 そうすると、パーソナルトレーナーが顧客の食生活や自宅でのトレーニング状況に関する行動データを把握できるようになり、顧客がジムにいない時間帯の過ごし方もアドバイスできるようになります。このことは、行動データを連携させることによってパーソナルトレーナーの提供価値を拡張し、「短期間でのダイエット・身体づくり」という顧客の成功をより強力に支援できるようになっていることを意味します。

 これはあくまで一例ですが、このように複数の顧客接点の間で行動データを連携させることによって、バリュージャーニー全体での体験品質を高めることができるのです。

 これらの2つの理由から、バリュージャーニー型に転換した企業は、転換しなかった企業よりも高い競争力を持てることになります。

バリュージャーニー提供企業同士の競争も

 次に、バリュージャーニー型に転換した企業同士では、どのような企業がより強い競争力を持つのかを説明します。

 ビフォアデジタル時代においては「製造業、小売業、メディア業」のように、業種が異なる企業が競合関係になることはほとんどありませんでした。また、同じ製造業・メーカーであっても「コーヒー業界、お茶業界、ビール業界」のようにモノベースで市場が細分化されており、異なる業界・市場に属している企業を競合相手と見なすことはほとんどありませんでした。しかしアフターデジタル時代においては、同じような顧客の成功を支援するバリュージャーニーを提供している企業同士は競合・代替関係になります。