デジタル化が進展する今の時代に企業が考えるべきことは何か。2021年9月発売の書籍『UXグロースモデル アフターデジタルを生き抜く実践方法論』から一部を抜粋し、5回にわたって紹介する。第4回ではアフターデジタル時代の産業構造について解説する。(技術メディアユニットクロスメディア編集部)
アフターデジタル時代が到来してしばらく時間が経過すると、まず「バリュージャーニー型に転換しなかった企業」や「挑戦し切れず、バリュージャーニー型に転換できなかった企業」の競争力が徐々に失われていきます。
例えば、運動靴メーカー(A社)、健康サプリメントメーカー(B社)、トレーニングジムの運営企業(C社)の3社がデジタルチャネルを活用して「健康寿命の延伸」という顧客の成功を支援するバリュージャーニーを展開したならば、これらの企業は競合・代替関係になります。もし運動靴メーカーのA社だけがバリュージャーニー型への転換を目指し、残りの2社(健康サプリメントB社、トレーニングジムC社)はバリュージャーニー型への転換を断念したとします。
すると、顧客から見るとA社は「バリュージャーニー全体で、自らが目指す大きな成功(=健康寿命の延伸)を支援してくれる企業」となり、B社・C社は「単一のプロダクトやサービスで、個々の行動ステップにおける小さな成功を支援してくれる企業」となります。おそらく多くの顧客はA社のサービスを選択し、結果としてA社の売り上げは緩やかに増加していき、B社・C社の売り上げは徐々に低減していくことになるでしょう。
「バリュージャーニー型に転換しない」という選択
ではバリュージャーニー型へと転換しなかったB社・C社には、どのような生き残りの道があるのでしょうか。
B社・C社が新たな外部環境を生き抜くためのオプションとしては「A社が提供するバリュージャーニーに機能を提供する存在(機能提供者)になる」という選択肢があります。A社が提供する「健康寿命を延ばす」という成功を支援するバリュージャーニーに対して、B社・C社はそれぞれの強み・ケイパビリティを生かして機能のみを提供するプレーヤーとなっていくイメージです。B社は得意とするサプリメント製造能力を、C社は得意とするスポーツジムの運営能力をA社のバリュージャーニーに機能提供することで、間接的に顧客に価値提供するような存在となっていきます(図1)。