
バイオ/ヘルスケア領域の専門ニューズレター『日経バイオテク』が国内のバイオスタートアップ398社の情報を収集・分析した唯一無二のディレクトリー『バイオスタートアップ総覧 2021-2022』。ここで紹介した注目のデジタルヘルス系スタートアップ30社の姿を見てみよう。(技術メディアユニットクロスメディア編集部)
日本発のデジタルヘルス系スタートアップが増えている。2021年、国内のデジタルヘルス系スタートアップは約300社に上るとみられ、年々増加している。
デジタルヘルスで何がどう変わる?
「デジタルヘルス」とは何だろうか? デジタルヘルスの業界団体であるDigital Therapeutics Alliance(DTA)などは、「利用者の生活習慣やウェルネス、健康関連などへの関心を高める技術やプラットフォーム、システムを包含する概念であり、健康関連のデータを取得・保存・伝達したり、ライフサイエンスや臨床業務を補助したりするもの」とデジタルヘルスを定義する。デジタルヘルスを端的に言えば、利用者のウェルネスや健康を維持するためのあらゆるデジタル技術・システムということになるだろう。
デジタルヘルスをこれまでの医療と対比させると、医療とデジタルヘルスは、「対象者」「扱うデータ」「フィードバックや介入のあり方」が大きく異なる。
まず医療に比べてデジタルヘルスは「対象者」が広がる。医療の対象者が、主に疾患に罹患(りかん)した患者やその疑い患者であるのに対し、デジタルヘルスの対象者は、患者も含めウェルネスに関心を持つあらゆる人(利用者)ということになる。
次にデジタルヘルスは、「扱うデータ」も多様かつ膨大になる。これまでの医療では、医療機関を受診した際の検査結果やカルテ情報など、基本的には患者の生活時間のスナップショットのデータだけを扱っていた。それに対し、デジタルヘルスで扱うのは日中の活動だけでなく、睡眠時間も含めた日々の生活の中で取得できるあらゆるデータになる。
「フィードバックや介入」のあり方も変化する。これまでの医療では、患者のスナップショットのデータに基づき医師が診断を行い、医薬品などによる治療や生活習慣の指導・管理が行われてきた。一方デジタルヘルスでは、生活の中で取得したデータも含めた多様なデータに基づき、人工知能(AI)を含めたさまざまなシステムが利用者別に適したフィードバックや仮想現実(VR)のコンテンツやゲーム感覚のアプリなどの提供によって、ウェルネスを維持する。
デジタルヘルスで医療そのものが変わる
デジタルヘルスの登場で、医療そのものも影響を受けつつある。現在は主に、医療者の業務を効率化したり、遠隔医療を可能にしたり、医療の質を均質化したりするデジタル技術・システムの利用が広がっている。ただそう遠くない将来、現在の医療のあり方を変えるような動きも出てくるはずだ。
例えば、生活の中で疾患の診断に役立つようなデータを取得できるデジタルヘルスの機器やプログラムが開発されれば、健康な状態から疾患の状態に向かう、より早期の段階で患者を拾い上げたり、より正確に疾患を診断したりできるようになるだろう。
また、同じ疾患であっても、それぞれの患者の特性を判別するような機器やプログラムが開発できれば、個々の患者に適した治療や指導・管理が可能になるはずだ。さらに、予後や症状を改善するようなVRコンテンツやゲームが実現すれば、医薬品に代わってプログラム(ソフトウエア)で治療を行えるようになるかもしれない。
ただし医療向けに、診断の補助や疾患の治療のための機器やプログラムを、デジタルヘルスベンチャーなどの企業が提供するには、各国の法律に基づいて許認可を受ける必要がある。国内では、医薬品医療機器等法に基づいて、厚生労働省から医療機器や医療機器プログラムの認証・承認を取得することが求められ、開発のハードルはその分、高くなる。
デジタルヘルススタートアップは精神・神経疾患領域が多い
バイオ/ヘルスケア領域の専門ニューズレター『日経バイオテク』は、国内のバイオスタートアップ、約400社の情報を集めた「バイオスタートアップ総覧 2021-2022」を2021年6月に刊行した。その中で、医療向けに機器やプログラムを提供しようとハードルの高い開発に取り組むデジタルヘルス系スタートアップを約30社取り上げている。その多くは、診断を補助する医療機器(医療機器プログラム)を開発しているスタートアップだった。
では、そうしたスタートアップは、どの疾患領域で開発を進めているのだろう。「バイオスタートアップ総覧 2021-2022」では、そうしたデジタルヘルス系スタートアップを疾患領域別に分類し、一覧できるようにした。その結果、開発企業が最も多かったのは、11社が開発を進める精神・神経疾患領域、次に多かったのは、7社が開発を進めるがん領域だった。また、精神・神経疾患領域で機器やプログラムの開発を進める11社について、対象疾患を調べてみると、圧倒的に多かったのが認知症で、次いで精神疾患、ストレス性疾患が目立った。(続く)
バイオ/ヘルスケア領域の専門ニューズレター『日経バイオテク』が国内のバイオスタートアップ398社の情報を収集・分析した唯一無二のディレクトリー。全体の半分以上にあたる208社を記者が直接取材し、設立の経緯や研究開発の内容、事業開発の状況を詳細に分析。専門誌の記者の視点でその企業の強みや将来展望を明らかにしました。「ゲノム編集」「再生医療」「CAR-T」などキーワード別に企業を探せる「キーワード索引」を用意、疾患領域別にモダリティ(治療技術)と開発ステージでクロス分析したマトリックス図も掲載しており、事業分野や投資テーマに合わせて、意中のスタートアップをダイレクトにアクセスできます。バイオ/ヘルスケア市場への参入を検討している企業担当者は必携です。
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