コンサルティング会社クニエの新規事業戦略チームは、独自調査「サブスクリプション(サブスク)事業の実態調査」を基に、サブスク事業の成功・失敗要因を分析した書籍『なぜ9%のサブスクしか成功しないのか』をまとめた。この本で指摘された「失敗するサブスクの特徴」のうち、「組織」に関するものを紹介する。(技術メディアユニットクロスメディア編集部)
コンサルティング会社クニエの新規事業戦略チームは、サブスク事業経験者500人に対して「サブスク事業の実態調査」を実施した※。調査結果の「最重要KPI達成率」が100%以上を成功した事業(以下、「成功層」と呼ぶ)、100%未満を失敗した事業(以下、「失敗層」と呼ぶ)」と定義し、各設問の回答について、成功層と失敗層で有意な差が出ているものを「失敗するサブスクの特徴」としている。本項では、「失敗するサブスクの特徴」のうち、「組織」に関するものを紹介する。
失敗するサブスクの特徴① ノウハウなき見切り発車
「サブスク事業を進める具体的なノウハウ」に関連する調査結果が図表1である。結果を見ると一目瞭然で、失敗層は成功層よりも、具体的なノウハウが十分ないまま進めている。特に「ビジネスアイデアの創出・検証」「ビジネスモデル作成」「サブスク事業の合意形成・承認獲得」「販売チャネル構築、プロモーション設計」で差が大きい。
筆者らがインタビューした消費財の企業では、トップマネジメントの鶴の一声でサブスク事業の検討がスタートしたものの、結果は散々で、販売が伸び悩んでしまった。後から調査すると、「安価な商品なのでサブスクを利用する顧客がいない」ことが分かった。その原因は、社内にノウハウがなく、「ビジネスアイデアの検証」を実施しないままサービスを開始したことにあった。また、ビジネスモデルの設計として、利用シーンを想定したサービススペック(月内で利用できる回数制限の設定など)を検討する際、利益確保の観点が抜け落ちていた。結果として、サービス提供開始後に赤字運営となってしまった。
別の事例を紹介しよう。ある家電メーカーは新たにサブスク事業を開始し、サブスクの申し込みサイトを用意したものの、販売は伸び悩んでいた。調べてみると、提供内容(サブスクサービス)と販売チャネル(申し込みサイトなど)には気を配れているが、それを認知するチャネルが抜け落ちてしまっていた。この事象は、リアル店舗で販売していた企業がオンラインでのサブスク事業を開始する際によく陥る落とし穴で、「欲しいお客さまがいるから必然的に売れる」と思い込んでしまうのである。
このように、プロジェクトチームにノウハウが不足していると、本来ならサービス提供開始前に気付いて対策を打てるはずのことが、提供開始後の対応となり手遅れになる。