累計20万部を突破した書籍『アフターデジタル』シリーズ(日経BP)。この「アフターデジタル」のサービス作りについて世界のトップランナーが語り合ったイベント「L&UX 2021」を書籍化したのがシリーズの新著『アフターデジタルセッションズ』だ。このセッションの1つではMaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)の提唱者であるMaaS GlobalのCEO、サンポ・ヒエタネンさんと、「シビックテック」の第一人者のCode for Japanファウンダー関治之さんが対談した。2人の対談をなぜ企画したか、アフターデジタルシリーズの著者である藤井保文氏が解説する。(技術メディアユニットクロスメディア編集部)
このセッションでは、一企業の活動から少し視座を上げて、行政やスマートシティ、MaaS(Mobility as a Service)などに目を向けました。「デジタルとリアルを融合させた新たなUXの社会実装」においては、個別の企業のエゴイスティックな目的とは距離を置き、「社会善のための大きな目的やビジョン」がないと、多くの人を巻き込むことができず、推進力も発揮されません。こうした実現に向けて、最前線のイノベーターたちは、どのようにして様々なステークホルダーの共感と理解を得て、どのようにして事をなしているのかが、このセッションでのメインテーマになります。
1人目の登壇者は「MaaS」というコンセプトを世に打ち出した考案者であり、MaaSという概念を世界で初めて都市交通において実現したサービス「Whim」を運営するMaaS GlobalのCEO、サンポ・ヒエタネンさんです。
MaaSは、実現する難易度が非常に高く、複合的な交通機関によるサービスはなかなか実現例がありません。そんな中Whimは、バス、タクシー、電車やシェアリングの自転車までも全部合わせて定額のサブスクリプションで利用できます。
対談相手をどなたにしようと考えたときに、Code for Japanが最適なのでは、と思いました。シビックテックといわれ、エンジニアが社会善のために活動しているCode for Japanのような存在は、一企業ではなかなかできないことをやっている。というわけでファウンダーの関治之さんに出ていただくしかない、と思って話を持っていきました。
モデレーターは、Forbes JAPAN Web編集部の谷本有香さんにお願いしました。谷本さんはアフターデジタルの話に以前から共感していただいていて、さらに社会をどのように良くしていけるのかという視点を持って様々な活動をされています。英語も堪能で、アフターデジタルの議論、UX、ビジネス、テックが交ざっているような議論もできる方はなかなかいません。
サンポさんと関さんの話は、スタートアップも行政も、デジタルからリアルも、対極にあるような様々なトピックを高い解像度で理解していないとついていけないので、谷本さんが適任と思いました。
まずはWhimについてサンポさんに簡単にご説明いただいた上で、社会規模や街の規模でのイノベーションやDXについて議論をしていただきました。特にサンポさんのビジョナリーさがうかがえる話や、関さんの経験や苦労から来るリアリティーのある話は必見です。
(次回へ続く)
最先端の33人が語る、世界標準のコンセンサス
著者●藤井保文 監修/定価●2200円(10%税込み)/発行●日経BP/判型●A5変256ページ/発行日●2021年9月21日/ISBN 978-4-296-11041-4