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 累計20万部を突破した書籍『アフターデジタル』シリーズ(日経BP)。この「アフターデジタル」のサービス作りについて世界のトップランナーが語り合ったイベント「L&UX 2021」を書籍化したのがシリーズの新著『アフターデジタルセッションズ』だ。本書に収録したMaaS Globalのサンポ・ヒエタネン氏とCode for Japanファウンダーの関治之氏によるMaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)に関する対談を紹介する。(技術メディアユニットクロスメディア編集部)

MaaS Globalのサンポ・ヒエタネン氏:私はエンドユーザー向けのMaaSサービス「Whim」を運営するMaaS Globalを経営しています。私が考え出したMaaSという概念は今や世界的に知られるようになりましたが、この概念は実はかなり長い間温めてきたアイデアです。

MaaS Globalのサンポ・ヒエタネン氏。「MaaS」の提唱者として知られる
MaaS Globalのサンポ・ヒエタネン氏。「MaaS」の提唱者として知られる
(写真提供:ビービット)
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 世界はいつも「答え」を要求しますが、答えを出すにはまず正しい問題を知らなければなりません。多くの問題を知ることは、世界の経済成長とサステナビリティの最大の推進力であり、今後10年間に各都市で起こる最大の変化の源になるはずです。

 「どうやってMaaSというアイデアを思い付いたのか」と聞かれることが多いのですが、「車を所有するよりもいい方法はないのか?」と考え抜いたからだと答えています。

 車を所有する根本的要因は「自由」が関係しており、「全てのものから自由になるとはどういうことか」を何度も繰り返し考えています。何をするべきか、何を提案すれば地球の反対側に住む人たちに既存のものと同様にいいものだと感じてもらえるかをひたすら考えてきました。

 2006年にMaaSの概念を思い付いたときにはまだ実行不可能なアイデアで、実現まで約10年かかり、2016年にやっとMaaSを提供する企業を設立できました。多くの国や都市でサービスをスタートし、MaaSで大きな変化をもたらせると夢を見てきた国の一つである日本でも、ついにサービスが導入されようとしています。

私たちにとって車とは?

 さて、私たちにとって車とは何なのでしょうか。東京で車を所有する人の半分以上は週に1回か2回しか車を使いません。なのに、どうして車を持つのでしょうか。車の何がそれほど重要なのでしょうか。

 車を所有する根本的な理由はシンプルで「個人の自由」にあります。Whimのように好きなところへ、好きなときに、何も考えずに手間をかけずに気の向くまま行けるような自由のことです。

 そのためにはあらゆる移動手段が必要になりますよね。全ての電車、バス、タクシー、カーシェア、シェアサイクルやスクーターなど、あらゆる移動手段を自由に使えるサブスクリプションのモバイルパスを手にしたと仮に想像してみてください。日本国内はもちろん、世界中で通用します。