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 累計20万部を突破した書籍『アフターデジタル』シリーズ(日経BP)。オンラインとオフラインの境目がなくなる世界でUX(ユーザーエクスペリエンス)こそが重要であることを論じてきた。

 この「アフターデジタル」のサービス作りについて世界のトップランナーが語り合ったイベント「L&UX 2021」を書籍化したのがシリーズの新刊『アフターデジタルセッションズ』だ。本書に収録したMaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)に関する対談から一部を抜粋して紹介する。(技術メディアユニットクロスメディア編集部)

モデレーターを務めるForbes JAPAN編集部の谷本有香氏:日本では特にOMO(Online Merges with Offline)を進めようと取り組まれていて、DX(デジタルトランスフォーメーション)がバズワードになっている状況の中、私たちはテクノロジーを使えればそれでいいと考えがちです。IoT(インターネット・オブ・シングズ)データを連係する方法を考え、5GやAI、ブロックチェーンといった新しいテクノロジーを実用化する方法を考えるだけで十分だと思い込んでしまう傾向にあります。ですが、何より重要なのは顧客体験を向上させるために新しいテクノロジーをどう活用するのか、という順番ではないでしょうか。これについて、考えを聞かせてください。

モデレーターを務めるForbes JAPAN編集部の谷本有香氏(左)と、Code for Japanの関治之氏
モデレーターを務めるForbes JAPAN編集部の谷本有香氏(左)と、Code for Japanの関治之氏
(写真提供:ビービット)
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MaaS Globalのサンポ・ヒエタネン氏:その通りですよね。シビックテックやスマートシティーをはじめ、この種のあらゆる話でテクノロジーが最重要だと思いがちですが、はっきり言ってテクノロジーそのものに価値はありません。テクノロジーを継ぎ足すことも、同じく価値はありません。

 テクノロジーが発達すれば都市が良くなると考える人がいますが、これはまったく違います。私たちがテクノロジーを使うときにはそれなりの理由が必要です。人類の歴史で火を使うことが最大のイノベーションだった時代がありましたが、「最も進歩した都市とは最もたくさんの火がある都市だ」と言ったらどうでしょうか。それなら都市を丸ごと焼き払ったローマのネロ皇帝がスマートシティーの先駆者になってしまいますが、それはもちろん違いますよね。