IT、エネルギー、交通、医療、金融、流通まで幅広く、注目度の高いディープな技術を紹介する書籍『日経テクノロジー展望2022 世界を変える100の技術』。今回から取り上げた100の技術についてアンケート調査を実施して「2030年の期待度」を数値化して掲載している。編集を担当した日経BP 総合研究所の谷島宣之上席研究員に調査結果について聞いた。(聞き手は「日経の本ラジオ」パーソナリティの尾上真也)
尾上真也・「日経の本ラジオ」パーソナリティ(以下、尾上) 『100の技術』を開くと100件の技術のそれぞれに、「2030期待度」という評価点が付いています。これはどのようなものでしょうか。
谷島宣之・日経BP 総合研究所上席研究員(以下、谷島) 今回の本で初めて取り組んだ試みです。掲載した100件のテクノロジーについて、1200人を超えるビジネスパーソンに「2030年に期待できるものはどれか」と尋ねるアンケート調査をしました。複数回答で最大5つまで選んでもらい、「期待できる」という人の割合をパーセントで表示して「2030期待度」としています。

尾上 実際「2030期待度」の傾向はどうでしたか。
上位に並んだのは「エネルギー」技術 1位は……
谷島 本の第1章では、期待度が高かったテクノロジーの上位10件を並べて掲載しています。結果は……意外というか、いや当然というか。エネルギー関連、いわゆる、カーボンニュートラル(炭素中立)や二酸化炭素を出さないようにする技術が6件も入りました。
1位は「水素の大量輸送」。この技術を提案して解説した研究員によると、技術としてはすでに出来上がっていて、後は投資をどうするか、誰が誰と組んでやるか、といったビジネスの領域に入っているそうです。ただ、コストダウンが必要なので、そこはまだ、技術の領域かもしれません。そして、2位と3位も水素をエネルギーに使う技術がランクイン、4位が二酸化炭素の回収技術でした。
2位の「CO2(2は小文字)フリー水素」について編集している際、議論になりました。ある編集長が太陽光など再生可能エネルギーでつくった水素の技術を挙げ、経済産業省が呼んでいる「CO2フリー水素」という名称にして編集を進めていたのですが、この分野に詳しい記者から「その名称は日本でしか使っていない、世界の大勢は違う」と指摘されました。
悩んだ結果、調査で「CO2フリー水素」という名称を使ったことからそのままの表記にしました。ただし本文の記述に「世界ではこう言う」、と記者の指摘を加えました。
このように目を光らせている記者がたくさんいます。編集者としては大変でしたが(笑)。とにかく幅広い分野で、このような多様な議論を重ねて、本書がつくられています。