広がり続けるテクノロジーは人の体や心(脳)にまで入り込んでくる。我々はテクノロジーとどう付き合えばよいのか。IT、エネルギー、交通、医療、金融、流通まで幅広く、ディープな技術を紹介する書籍『日経テクノロジー展望2022 世界を変える100の技術』を編集した日経BP総合研究所の谷島宣之上席研究員に尋ねた。(聞き手は「日経の本ラジオ」パーソナリティの尾上真也)
尾上真也・「日経の本ラジオ」パーソナリティ(以下、尾上) 『100の技術』を編集する中で、谷島さんが感じたことを教えてください。
谷島宣之・日経BP総合研究所上席研究員(以下、谷島) 月並みな言い方になるかもしれませんが、「テクノロジーは広がった。いや、広がり過ぎたなあ」と感じています。「技術を導入して世界を変える」というより、「世界がテクノロジーになってしまった」という印象です。

今回の『100の技術』の中に「アンビエント・インテリジェンス」という技術が入りました。直訳すると「環境知能」。要は、身の回りにあるものがインテリジェンスを持って人間を手伝ってくれる、という意味です。
ある研究員がこの技術を挙げてくれました。2015年に日経クロステックでこの技術について書いた記事があり、当時の担当記者に問い合わせたところ、彼が初めてこの言葉を聞いたのは、2006年だったそうです。
それからおよそ15年後の今、まさに世の中は「アンビエント・インテリジェンス」になりました。テクノロジーの進化は地続きですが、進化の様子も明らかに変化してきたと実感します。
読者の皆さんの身の回りも、見渡せばテクノロジーだらけだと思います。昔のスーパーコンピューターより圧倒的に性能がいいスマートフォンを多くの人が持ち、世界中の人とつながっている状態はすごいというか、不気味というか(笑)。