
二酸化炭素(CO2)が企業を揺さぶっている。カーボンニュートラル(温暖化ガス排出量実質ゼロ、炭素中立)に関しては2030年や2050年といった報道がなされるが、「将来に解決すべき問題」ではなく、「今取り組まないといけない問題」である。では、企業は何をどのように考えて取り組めばいいのか、ボストン コンサルティング グループ(BCG、東京・中央)の著者陣が書籍『BCGカーボンニュートラル実践経営』にまとめた。この本で整理した「カーボンニュートラル前提条件」について紹介する。(技術メディアユニットクロスメディア編集部)
ビジネス系のメディアには「カーボンニュートラル」「脱炭素」に関わる記事が連日のように、それも複数掲載され、その分量も日ごとに増えている。CO2排出規制のような政策に関わるものから、国際協調の枠組み、投資家の動向、消費者の意識、企業の先進的な取り組みまで内容面も多岐にわたる。加えて、脱炭素がテーマとあってCO2の議論を想定して読み進めると、化石燃料の代替としての水素やアンモニアなどが取り上げられていることもある。議論対象の幅が広がり、追うのも難しいほどの目まぐるしさだ。
そのような慌ただしい展開の中で明らかになってきているのは、カーボンニュートラルへの取り組みが、今や社会、国、企業にとって最重要アジェンダの1つであること、また企業目線では、対応の仕方によってはその浮沈に大きく影響する大問題であるということだ。今、企業が下す意思決定やアクションが今後数十年にわたる企業の競争力を大きく左右する可能性があるといえる。
世の流れや競合に追従するのみでは後塵(じん)を拝することとなり、競争優位は構築できないだろう。半面、カーボンニュートラル実現に向けむやみにアクセルを踏めば、不要な投資を重ねたり、既存事業の競争力劣化につながったりするリスクも大きい。よって、この資本主義の大変容をもたらしかねない新しい環境を正しく理解し、どう適切に「カーボンニュートラル経営」を推し進めていくかは、極めて重要なアジェンダになっている。
では、世界はどの程度のスピードでカーボンニュートラルに向かうのだろうか。推進速度を見極めるのに役立つのが「カーボンニュートラル9つの前提条件」だ。この前提条件の充足度が高いと積極姿勢をとり推進速度は速くなることが予想され、充足度が低いと積極的な対応はとらないだろうと予想できる。